(2021/5/17 05:00)
コロナ禍のツケを次世代に回すわけにはいかない。
「国の借金」が急速に膨らんでいる。国債や借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」は3月末時点で過去最高の1216兆4634億円に達した。国民一人当たり約970万円の「借金」を背負っている計算。
2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大で冷え込む景気対策のために、3度にわたり大型の補正予算を編成したため、1年間で国の借金が101兆9234億円も増えた。
21年度予算では新型コロナウイルス対策予備費として5兆円を計上した。政府は3度目の緊急事態宣言を発令し、自治体による事業者の休業や時短営業への協力金などの財源として5000億円の支出を決めた。
14日に、ワクチン確保の資金として5120億円の支出も決定した。予備費の残高は3兆9880億円。新型コロナの収束の見通しはいまだ見えず、今後も補正予算の編成など、追加の財政出動の可能性もある。
新型コロナ対策のための財政出動は躊躇(ちゅうちょ)してはならない。コロナ禍が長期化する中、打撃を受けた家庭や企業への支援は必須である。しかし、避けては通れないのが財源についての議論だ。このまま赤字国債依存体質が続けば、財政再建は遠のき、将来世代にしわ寄せがいく。
米国のバイデン政権はインフラなどの投資に2兆ドル超(約220兆円)、子育てや教育支援に1兆8000億ドル(約200兆円)の大規模な経済対策を打ち出しているが、その財源として法人税率の引き上げなど税制改革案も示している。英国も新型コロナ対策の財源として23年4月に、法人税率を引き上げる方針だ。
秋までに総選挙が行われるタイミングであり、増税を含む歳入改革の議論をスタートさせるのは容易ではないだろう。しかし、東日本大震災後に創設された「復興特別税」のように、新型コロナ対策のための財源についても考えるべきだ。コロナ禍と財政再建をどう図っていくのか。議論を尽くし国民に真摯に語るのが政治の役割だ。
(2021/5/17 05:00)
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