(2021/5/18 05:00)
西日本が早くも梅雨入りし台風シーズンが近づいている。企業は社会的責任として社員の生命を守るという防災の基本に立ち返り、激甚・頻発化する風水害への備えを強化したい。
2019年10月に発生した令和元年東日本台風(台風19号)は、静岡県や新潟県、関東甲信・東北地方などに甚大な被害をもたらした。24時間降水量は103地点で観測史上最高となるなど記録的な大雨となった。
中央防災会議ワーキンググループの報告(20年3月公表)によると、屋外で亡くなった50人のうち「仕事中」「通勤・帰宅中」の被災が3割弱含まれる。企業は率先して社員の安全確保に取り組む必要があろう。
内閣府は今年4月、企業の事業継続能力向上のための基本的な考え方をまとめた「事業継続ガイドライン」を改定した。気候変動に伴う風水害の激甚・頻発化という近年の災害特性を踏まえ、社員の安全確保により注力するよう求めている。
具体的には、台風や豪雨などで公共交通機関が計画運休となるなど、出勤・退勤が困難になることが想定される場合は、計画休業やテレワークの実施、特別休暇の取得などにより、危機が去るまで社員を待機させることが重要としている。
特に天候が悪化する中で社員を帰宅させるリスクには注意が必要だ。台風19号では、屋外での死亡者の半数以上が車で移動中に冠水したアンダーパスなどで被災している。設備管理などで出社しなければならない社員は、工場が高台などにあり安全と認められる場合、職場に留まることも有効な選択肢になる。 中小企業では事業継続計画(BCP)が防災・減災対策の最善策とは限らない。社員の個別事情を考慮のうえ、1枚紙に各人の対応策をまとめて社内共有し、遅滞なく発動できる状態にしておくだけで効果がある。
台風などの進行型災害では準備の時間がある。自社への影響が最大化する時刻から逆算し早めに避難体制を整える。タイムライン防災の視点に立ち、社員の安全を守ることから自然災害に強い組織づくりを進めたい。
(2021/5/18 05:00)
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