(2021/8/5 05:00)
蓄電池産業の育成は、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)と経済安全保障の両面で欠かせない。
蓄電池は自動車電動化や再生可能エネルギーの主力電源化を実現するものとして世界が開発を競っている。出遅れは日本の産業競争力の低下に直結する。
すでに中国が官民連携で強化に乗り出し、欧州連合(EU)も大型資金を投じて育成に乗り出し、米国も今後開発を強化する方針を打ち出した。
日本は2016年には世界市場で4割近いシェアを持つトップだったが、車載用のリチウムイオン電池は中国、定置用は韓国が台頭し、地位の低下を招いている。このままでは蓄電池も半導体や液晶がたどった道を追うことになりかねない。
政府は次世代蓄電池について、30年までのできるだけ早期に、国内で100ギガワット時の生産能力確保と、蓄電池パック価格を1キロワット時当たり1万円以下とする目標を掲げた。政府が創設する「グリーンイノベーション基金」から開発資金を拠出する。
日本の強みは、世界有数の自動車メーカーと、素材産業がそろっていることだ。弱みはリチウムやコバルトなどの希少鉱物資源が特定の国に偏在し、調達の多様化が図れない点だ。
経済産業省は今後の開発の方向性として全固体電池の高容量化(1リットル当たり700―800ワット時)や、希少資源の使用量を減らす材料開発などを掲げた。今後民間企業から提案を募り、採択したものに集中して資金を投じ支援する。
重要なのはコストの低減だ。大量生産による低減効果に加え、車載用として使用した後に、家庭用として再利用するなど、用途を広げトータルコストを低減する方策も考えるべきだ。同時に希少素材や部材をリサイクルして再利用することも取り組むべき課題である。
そのためにも、自動車や蓄電池メーカーだけでなく、開発段階から幅広い分野の企業が活用策を考える体制をとる必要がある。世界との競争に官民が総力あげて立ち向かってほしい。
(2021/8/5 05:00)
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