(2021/8/6 05:00)
感染症の再拡大と半導体不足が、回復傾向にある企業業績の行方を不透明にしている。コロナ禍の克服は苦難の道だが、変革への歩みを続けてほしい。
製造業を中心に大企業の業績は急回復している。トヨタ自動車の2021年4―6月期連結決算は、営業・当期利益とも過去最高となった。日産自動車も22年3月期の当期損益の黒字転換が見込めるまで回復した。北米や中国などワクチン接種が進み、消費活動が回復する国で順調に販売を拡大させた成果が表れている。
電子部品も車載やデジタル機器向けの需要増により、日本電産は同4―6月期の売上高が過去最高を更新し、村田製作所は通期見通しを上方修正した。
コロナ禍の打撃に苦しむ業種でも、日本航空とANAホールディングスが同4―6月期の赤字幅を前年同期より縮小させた。コスト削減の徹底と国際線の貨物需要の取り込みなどの収益構造改革への必死の努力によるものだ。
コロナ禍による業績の最悪期は脱した、と言い切れないのが、デルタ株による世界的な感染拡大と半導体などの重要部品の供給不足の影響である。日本とサプライチェーンで強固に結ばれている東南アジアで感染が猛威を振るい、工場の操業停止が相次いでいる。半導体は米中による囲い込みが長期化し、安定した調達には1年以上を要するとの見方もある。好業績でも通期見通しを据え置く企業が多いのは、先々の不透明さからだ。
次々に苦難が襲う状況ではあるが、だからこそ変革への取り組みを止めてはならない。調達ルートの多様化やボトルネックとなりそうな素材や部材を削減するための研究開発、新たな成長分野への投資など、取り組むべきテーマは無限にある。
今は外需に頼る収益改善だが、国内もワクチン接種が進む10月以降になれば、消費拡大への機運も高まる。国民の貯蓄額は大幅に積み上がっている。
厳しい中でも成長へ準備を進める企業と、漫然と時の経過を眺める企業の格差が、コロナ後に広がるのは間違いない。
(2021/8/6 05:00)
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