(2021/8/13 05:00)
コロナ禍で経営危機に見舞われる中小企業が早期に事業再生を果たすため、私的整理の使い勝手を改善させたい。
中小企業の債務過剰感が高まっている。感染の収束が見通せず、飲食業や旅行、宿泊関連業などでは、経営改善の見通しが立たない状況に直面している。
政府は引き続き実質無利子無担保融資などの資金繰り支援策を講じるものの、過剰債務から抜け出すのが困難な企業が続出する懸念が生じている。リーマン・ショック時には翌年に企業倒産が増加した前例もある。
経営危機の抜本的な対策には、債務の整理が重要となる。現行の債権放棄は、民事再生法などの法的整理と、金融機関と債務者が協議する私的整理の二つの手法が採られている。
法的整理は裁判所の関与で強制力を伴う債権放棄が可能だが、日本では信用やブランド価値を毀損(きそん)するケースが多い。私的整理は当事者間だけのため企業価値の毀損を回避しつつ、事業再生をはかることができるものとして定着しつつある。
ただ、私的整理は債権放棄に反対する債権者がいると実行が困難で、原則として経営陣の退任が求められるため、オーナー経営者が多い中小企業にとっては使い勝手が悪い部分もある。
政府は6月に策定した成長戦略実行計画で、中小企業の実態を踏まえた私的整理等のガイドライン策定を検討する方針を掲げた。具体的な策定作業は全国銀行協会などの民間が主体となる見込みだが、返済猶予や債権放棄への債権者の合意形成や経営者責任のあり方などについては、政府としての考え方も示した上で策定作業を促す方針。
金融機関には安易な債権放棄への警戒感が強いが、何ら対策を講じなければ、リーマン・ショック時以上の企業破綻が起きかねない。また、企業の実態を把握し再生計画を作成する実務者人材不足という課題もある。
どうすれば1社でも多くの企業を再生させられるか、という発想で、関係者が協力する仕組みを今のうちに作り上げたい。苦境に立つ経営者が前を向ける施策が必要だ。
(2021/8/13 05:00)
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