産業春秋／ネコの視点

世界的な建築家である隈研吾さんに取材する機会を得た。その中で印象に残ったのは、「これからの街づくりにはネコの視点が重要」という言葉だった。「えっ、なぜネコの視点なのですか」と思わず聞き返してしまった。

これまで都市や街を整備する場合、上からいわば“神”の視点で造形してきたという。ヒトはモノばかり見ていて、自らが暮らす空間を見ていなかったと隈さんは指摘する。これとは反対にネコは自分だけの道を地上の目線で歩き、自分だけの隙間や空間を見ている。そして自分が心地よいと感じる空間に身を寄せる。

既存の都市をネコが住みやすい空間に造り替えるという意味ではない。これからの街づくりには、ヒト自らが暮らす心地よい空間づくりが不可欠だということと理解した。

さてこれまでに築き上げてきた巨大なコンクリートジャングルをヒト中心の空間に変えるのに一体どれだけの時間が必要だろうか。

わが家もネコ３匹とともに暮らしている。気がついてみると、巨大なキャットタワーを置いたり、キャットウォークを設置したりとネコが住みやすいよう随分と手を入れてきた。果たして、ヒトが暮らしやすい空間になっているのだろうか。