社説/原発処理水放出で具体策 着実な実行で風評被害抑制を

(2021/8/27 05:00)

難問の解決に踏み出したことを評価したい。

東京電力は、福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出について具体策を公表した。政府はこれとは別に、放出に伴う風評被害を防止するため、水産物の買い取り基金を創設する方針。これらの着実な実行によって放出に対する理解を深め、被害を抑制してほしい。

東電の案では、まず専用の放水立坑(プール)に海水をため、少量の処理水を流して希釈し、トリチウム濃度が適切な範囲内か確認する。その後に同じ割合で希釈した処理水を海底トンネルを通し、1キロメートル程度沖の漁業が行われていない海域に放出する。放出口付近を含め、採水によるモニタリングの場所と回数を増やして安全を確認するとしている。

沖合への放出は、希釈し放出した処理水を再び希釈用の海水として取水するのを防ぐのが目的という。いずれも地元の意見を入れ、安全性を高めた妥当な方法と言えよう。

同時に、風評被害に対する賠償の考え方を示した。沖合の海産物を原料とする工場などを想定し、業種や地域を限らず対象とする。放出前後で売上高が減少した場合、その製品の「貢献利益率」を計算して賠償額を算定するとしている。

風評被害に関しては、国民の理解を深めることで風評そのものを発生させないことが最善である。その上で被害が出てしまった場合に、誠意を持って賠償するのが当然だ。商工業者は従業員の雇用や建物・設備の維持など固定的な経費がかかる。逸失利益を賠償するだけでは事業を維持できないケースもあろう。賠償額算定には、そうした要素を加味する必要がある。

処理水の放出に関して、科学的な安全性は確認されたと言っていいだろう。政府が示す2023年春の放出開始ができないと、新たな処理水の保管場所がなくなる。地元に丁寧な説明を行い、外部の監視を含めて信頼を得、適切に計画を進めたい。

政府は常に東電と緊密な連携をとり、安全確保に努める責務を担うべきだ。

(2021/8/27 05:00)

総合2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

ゴム補強繊維の接着技術

ゴム補強繊維の接着技術

事例で解決!SCMを成功に導く需給マネジメント

事例で解決!SCMを成功に導く需給マネジメント

集まれ!設計1年生 はじめての締結設計

集まれ!設計1年生 はじめての締結設計

これで差がつく SOLIDWORKSモデリング実践テクニック

これで差がつく SOLIDWORKSモデリング実践テクニック

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン