(2021/8/31 05:00)
量子コンピューターの産業利用や社会実装が本格化する時期が想定よりも早まる公算が大きい。土台となるハードウエアの開発は海外勢が先行するが、日本は利活用でトップに立てるよう産業界の力も生かして「量子人材」の育成を急ぐべきだ。
これまで解けなかった社会課題や膨大な計算問題が一瞬で解けたら、世の中が変わる。量子コンピューターはこうした期待を担っているが、これまで実用化は5―10年もしくは20―30年先などと言われてきた。何をゴールとするかで見解は分かれるものの、ここにきて実用化への時間軸は前倒しされている。
時間軸では量子コンピューターの計算速度が従来型コンピューターを圧倒的に上回る「量子超越性」の達成も俎上(そじょう)に乗る。達成のハードルは高いが、もはや夢物語ではない。
時間軸が早まる理由には、量子コンピューター市場に巨額な投資マネーが流れ込んでいることが背景にある。米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が公表した調査によると、量子コンピューターの研究開発に流入したエクイティ投資(株式取得と引き受けを伴う投資)は2020年が前年比3倍の6億7900万ドル、21年には8億ドルに上る見通しだ。
過去10年間でみると「投資総額の約3分の2が18年以降に実行された」(BCG)ことが分かる。また、20年実績は5億2900万ドルと大半がハードウエア開発向けだった。
ハードウエアはすでにIBMやグーグル、ハネウェル、イオンQなどの海外勢が先行し、新技術に敏感なアーリーアダプター(初期採用層)企業とユースケース(利用例)開拓が進む。
カギとなるのは市場ニーズ。材料開発や創薬、自動車、物流など、奥行きの深い日本の産業界の力を生かす好機といえる。だが、量子コンピューターの利活用は機が熟してから、投資し参入できるほど甘くはない。
海外では企業による人材獲得競争が始まっている。産業界が具体的なニーズを早期に示し、量子人材の育成にも主導して取り組むべきだ。
(2021/8/31 05:00)
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