(2021/9/3 05:00)
国、地方自治体、IT企業が適切な距離感を確保しつつ、コスト削減や行政サービスの向上を果たすことを期待したい。
デジタル庁が1日に発足した。政府は同庁を、デジタル社会の形成を担う司令塔として位置付けている。他省庁への勧告権を含む強力な総合調整機能を持たせ、国や地方公共団体の情報システムを統括・監理する。
デジタル庁が進める重要案件の一つが「ガバメントクラウド」だ。ネットワーク経由で記憶装置やソフトウエアを提供するクラウドを活用し、自治体が使う17の基幹業務システムを標準化する。システムの維持費を減らし、新たな行政サービスの実現などに向けた積極的な投資の余力を捻出する狙いがある。
17業務の標準仕様書をまとめる過程で政府に問われるのが、自治体との向き合い方だ。規模の大きい地方公共団体の中には、住民サービス向上の観点で独自のシステムを構築してきた例もある。そうした機能のうち、他の自治体にも横展開が可能なものについては、標準仕様に盛り込むことが望ましい。
一方で、全ての団体の要望をくむことは非現実的だ。ガバメントクラウドへの移行完了目標時期は2025年度末に設定されており、国と地方の調整が難航すると全体のスケジュールに影響する可能性もある。標準仕様の策定を担う各省庁には、全体最適を意識しつつ多様な声に耳を傾ける姿勢が求められる。
適切な距離感の確保は、IT企業との関係においても必要になる。政府や自治体の情報システムでは、過度に特定事業者の技術・製品に依存し、他社の参入が難しくなる「ベンダーロックイン」の状況に陥りがちだと長らく指摘されてきた。
官公庁や自治体にIT人材が増えれば、ベンダーと対等な議論がしやすくなり、依存リスクも減る。デジタル庁は発足当初、約600人の職員のうち200人程度が民間出身者で、非常勤も含まれる。兼業先企業に便宜を図るなどの利益相反は防がねばならない。民間人材を登用しつつ、調達の透明性を向上することが今後の課題になる。
(2021/9/3 05:00)
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