(2021/10/25 05:00)
首都圏1都3県や大阪府などに出されていた飲食店への営業時間短縮要請が25日、解除される。新型コロナウイルスの感染対策と経済活動の両立へ向けた一歩としたい。
酒類提供時間や利用人数など、自治体の判断で一部制限は残るものの、感染防止対策の認証店は、ほぼ通常営業が可能となる。ワクチン接種率の向上を踏まえれば妥当な判断だ。効果を最大限生かしながら経済活動を再起動する局面に入った。
他方、解除を機に気が緩めば、すでに懸念されている感染第6波が現実のものとなり、度重なる時短要請に応じてきた飲食店をはじめとする事業者の辛抱が水泡に帰してしまう。
引き続き社会全体で感染防止に取り組みつつ、経済活動の本格化への道筋を慎重に描く必要がある。
切り札の一つとなるのがワクチン接種記録の活用だ。民間では利用者が接種記録を登録すれば、賛同企業から割引などの特典を受けられるスマートフォンアプリの開発、導入が進む。
公的証明ではないため、利用機会は限られるが、顧客との接点を求める企業からの関心は高いという。政府が進める接種記録のオンライン発行はこれからだが、民間の取り組みも参考にしながら利用者目線に立ったシステムとしてほしい。
経済の正常化がようやく見えてきたとはいえ、中小企業の多くは制度融資や助成金などの支援策を最大限活用しながら事業継続しているのが実情だ。
経済活動が一気に活発化すれば、構造的に人手不足にある中小企業の採用や雇用環境へのしわ寄せも危惧される。政府や自治体には事業の本格再開を後押しすると同時に、経営基盤が脆弱な企業への目配りを引き続き求めたい。
日本のみならず世界はコロナと共存する新たな社会を模索している。変異株が相次ぎ出現したことからもワクチンの接種効果がいつまで続くのかといった先行き不安も払拭(ふっしょく)できない。だからこそ一気にアクセル全開にするのではなく、今後起こりえるあらゆる局面に備えたい。
(2021/10/25 05:00)