(2021/12/17 05:00)
デジタル、グリーン分野に資する人材育成を強化し、日本の労働生産性を上向かせたい。
政府は成長と分配の好循環を目指すための経済政策を話し合う「新しい資本主義実現会議」(議長=岸田文雄首相)で、人への投資を強化する方針を示した。人への投資が生産性向上や消費を誘引して国民総所得を引き上げ、さらなる投資につなげる好循環を実現する。その姿勢は極めて重要である。人材への投資を抜本的に強化すべきだ。
岸田内閣が初めて策定した経済対策は、働き手がデジタルなどの新しい時代のスキルを身につけられるように、3年間で4000億円の予算を投じる施策パッケージを盛り込んだ。正規・非正規雇用を問わずに職業訓練や再就職支援に助成金をそろえ、労働移動を円滑にする。
これらの施策はより高い付加価値を創出できる産業に人材をシフトさせるためにも重要だ。特にデジタルやグリーンなど成長分野を支える人材の育成が求められる。大学などでのリカレント教育や職業訓練制度の拡充、企業の人材投資を促進するための情報開示制度の充実なども取り組む必要がある。
人材投資の規模は先進各国に大きく見劣りする。内閣府の調査では、日本企業の人的投資(オン・ザ・ジョブ・トレーニングを除く研修費用)は2010―14年に対国内総生産(GDP)比で0・1%だ。米国の2・08%、フランスの1・78%に比べて極めて低い。さらに95―99年に比べて割合は4分の1以下となり、低下傾向もみられる。
人材投資の低落が続く限り、先進7カ国(G7)で最も低い労働生産性の底上げは望めず、経済の長期停滞から脱することはできない。政府が人への投資を強力に打ち出すことで、日本企業全体へと波及させたい。
従業員数で日本全体の7割を占める中小企業は、低生産性の課題に直面している。デジタル技術の導入などによる業務革新が必要だが、ITを使いこなす人材が不足し、投資余力も乏しい。デジタル技術導入を支援する専門家の派遣など、中小企業目線の支援策も重要である。
(2021/12/17 05:00)
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