(2021/12/20 05:00)
2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を実現する上で、代替フロン(HFC)排出削減を加速させなければならない。
地球温暖化への現実的な対応策として、エアコンの普及が世界で拡大している。しかし、エアコンや冷凍機などの稼働に必要な冷媒には、二酸化炭素(CO2)より高い温室効果がはるかに大きいHFCが使われている。都市化の進行などで、世界のエアコン稼働台数は50年までに約3倍に増加すると見込まれており、HFC対策が喫緊の課題となっている。
日本はモントリオール議定書キガリ改正において、36年までにHFC類の排出量を11―13年比85%削減を約束している。現行冷媒だけでは、達成は困難とみられている。
考えられる対策はHFCの成分を見直し、地球温暖化係数(GWP)が10以下程度と低い冷媒に切り替えることと、HFCを利用しない自然冷媒の採用の二つがある。ただ、GWP値がゼロや低い冷媒には、わずかだが燃焼性があったり、新冷媒に対応したエアコンは省エネ性で劣ったり、設置面積が大きくなり導入コストが上昇するといった課題もある。
エアコンは業務用、民生用とも世界で成長余地の大きい市場。世界トップのダイキン工業をはじめ、パナソニック、三菱電機など、上位に日本企業もいるが、中国メーカーの追い上げが激しい。温暖化対策に資するエアコンを世界に先駆けて開発することは、市場獲得を有利にすることにもつながる。
各社が開発を加速させるとともに、経済産業省や環境省も支援を強化してもらいたい。開発だけでなく、安全性の確保や規制緩和など制度面の整備を急がなければならない。
ユーザーに対しても、新冷媒や機器の開発方針を早期に示すとともに、古いエアコンを使い続けることが温室効果ガス排出につながることを伝え、適切なタイミングで買い換えを促す施策が必要だ。
温暖化防止と産業競争力強化の二兎を追う対策が急がれる。
(2021/12/20 05:00)