(2022/1/5 05:00)
脱炭素と歩調を合わせた成長戦略が始まる年にしたい。
2021年末、日本各地は大雪に見舞われた。夏の豪雨と同様、「数年に一度」級の寒波が毎年のように襲来している。極端な気象は操業停止や供給網の寸断、販売機会の損失を招く。企業は年中、どこにいても気象災害の打撃を受けるようになった。
「温暖化対策はイノベーション」という言葉が聞かれる。経営者は“気候危機”への意識を強く持つべきだ。中途半端な危機感では、中途半端なイノベーションしか起こせない。事業基盤が脅かされる強い危機感があればイノベーションを加速させ、ビジネス機会を獲得できる。
4月、東京証券取引所が開設するプライム市場への上場企業は、気候リスク情報の開示が求められる。企業は温暖化対策に必要な費用と、災害の被害想定額を明らかにする。投資家は開示内容から経営を継続できるか見定める。気候変動を経営問題として真剣に捉えていない企業は、投資先に選ばれなくなる。
政府には“本気”となった企業が報われる施策を期待したい。ENEOSは2000億円を投じて再生可能エネルギー発電事業者を買収する。三菱ケミカルホールディングスは石油化学と炭素事業を分離する方針だ。ともに化石資源に依存した事業モデルから脱却する。大きな決断をした企業が評価され、適切な利益を得られる市場整備が求められる。
政府は太陽光パネルを徹底的に導入する方針だが、世界を席巻した日本の太陽電池メーカーは撤退しており、恩恵を受けるのは中国メーカーだ。洋上風力発電の普及にも乗りだすが、国内の風車メーカーも姿を消した。35年までにガソリンだけで走行する新車の販売は禁止するとしているが、日本車の対応が間に合わなければ、海外メーカーに市場を明け渡す。
政府はグリーン成長戦略で50年までに290兆円の経済効果があると試算するが、日本企業が成長の果実を得るにはイノベーションの格段の加速が求められる。産業界も強い危機感を持って実現に進んでほしい。
(2022/1/5 05:00)
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