(2022/3/28 05:00)
周波数の割り当ては、行政の透明性向上と通信技術の革新を両立できる手法で行うべきだ。
総務省の有識者会議が、携帯電話用の周波数について、より高い金額を提示した企業へ割り当てを行うオークション方式に関する議論を続けている。NTTドコモが前向きな姿勢を示す一方、携帯通信事業に本格参入したばかりの楽天モバイルは資金面の懸念から猛反発し、導入の是非の結論は出ていない。
議論の過程では、従来の割り当て手法である比較審査方式の限界があらためて認識された。同方式における評価基準の例には、通信可能エリアの広さや、基地局の開設数などがある。だが評価項目を決める政府の裁量が大きく、透明性に課題が多いと考えられてきた。総務省は行政改革を前進させる意味でも、割り当て手法の再考が必要だ。
有識者会議の1次取りまとめ案では、オークションの利点の一つに「入札に参加する各事業者が価値を生み出せるのかについて、行政が十分な情報を持たない場合にも、最も適切な事業者に周波数を割り当てることができる」点があると指摘された。規制当局が、変化の早い通信市場の動向を見通せるとは限らないと率直に認めたことは、大きな成果と言える。
加えて「事業者の裁量の余地が増え、結果としてイノベーションの促進につなげられる」と明記された点も見逃せない。比較審査方式の下で通信会社が将来の基地局数を約束して周波数の割り当てを受けると、市場が変化した際に設備投資計画を見直しにくくなる可能性も考えられる。顧客の需要に応じた通信網を機動的に構築できる体制があれば収益を上げやすくなり、技術革新も進むだろう。
ただ、オークションのデメリットを軽減する方策は必要だ。資金力の大きい事業者に周波数が集中しすぎると、競争環境に悪影響が出かねない。諸外国では獲得可能な周波数に上限を設けたり、新規参入者のみが参加できる特別な周波数枠を設けたりしており、日本でも導入を検討する余地はある。バランス感のある制度設計を期待したい。
(2022/3/28 05:00)