(2022/5/2 05:00)
先端兵器の輸入が増えるだけでは防衛力は高まらない。
ロシアによるウクライナ侵攻を機に、与党は防衛費を国内総生産(GDP)比2%規模に引き上げる構想を進めている。従来の目安だった1%を倍増するもので、実現すれば4兆円以上の巨額の歳出増となる。岸田文雄首相は、ドイツをはじめ先進国に同様な動きがあることを念頭に「あらゆる選択肢を排除せず検討」と表明した。
わが国の周辺国は近年、急速に軍備を拡張し、安全保障上の脅威が高まっている。長くジリ貧状態にあった防衛費は2013年度から増加に転じ、22年度予算まで8年連続で当初予算で過去最高を更新。21年度の補正では「緊急の必要性」の考え方を改め、主要な武器の調達も対象とした。
すでに防衛費は1%を大きく越え、産業界もこれを支持している。とはいえ、一気に2%に引き上げるには、慎重に考えなければならないことがある。
第一に、防衛費の支出先だ。先進的な武器が求められるにつれ、ステルス戦闘機をはじめ米国製品の輸入比率が過去になく高まっている。単純に装備を増やすのではなく、研究開発の比率を高め、国産の装備品開発に力を注いでもらいたい。
これまで国産の主要装備の輸出は成功していない。性能に比べてコストが高いことが問題とされてきた。この弱点を克服する道も探るべきだ。
またウクライナではドローン(飛行ロボット)をはじめ、民生品に近い機器が戦場で活用され、戦果を上げている。自衛隊としても最先端一辺倒ではなく、こうした低コストの戦い方を学んでほしい。
第二に、人員の問題である。防衛予算の半分は人件費や糧食費だ。最前線では定員割れが常態化している部隊も多い。また宇宙・サイバーなどの新領域でのノウハウを持つ隊員は限られる。人員の増強と育成に資金を回さなければ自衛隊の能力を高めることは難しいだろう。
財政の厳しい中で大きな歳出を目指す以上、国産を主体として効率を高める必要がある。
(2022/5/2 05:00)