(2022/5/18 05:00)
2022年3月期決算は、業種や企業規模で明暗を分けそうだ。大手では輸出主導型の製造業が円安の恩恵を受ける半面、内需依存の企業は円安と物価上昇のコスト増が業績を直撃する。中小企業は後者のケースが多く、大手と中小の業績格差の拡大も懸念される。十分とは言えない、中小による発注企業への価格転嫁を促す必要がある。
SMBC日興証券によると、東証株価指数(TOPIX)を構成する1450社のうち、13日までに情報開示した1380社の22年3月期の当期利益は、前期比35・4%増の大幅増益だった。製造業は同65・3%増、非製造業は同8・9%増と、製造業が好業績をけん引する。
輸出主導型の製造業は円安が追い風となり、自動車を含む輸送用機器は同78・2%増、電気機器は同31・9%増と好業績が相次ぐ。非製造業は、資源価格の高騰を受けて商社や石油・石炭製品などの業績が好転した半面、電気・ガスは同69・6%減と大幅な減益だった。
内需依存型が多い中小企業にとって、輸入物価の上昇を招く円安は業績の足を引っ張る。日本商工会議所の調査によると円安は「デメリットの方が多い」と回答した中小企業は53・3%と過半を占めた。原材料・部品の仕入れ価格上昇に頭を悩ませており、発注企業への適正な価格転嫁が求められる。
価格転嫁は電気やガス、飲食料品、日用生活品などで徐々に進んでおり、中小製造業の部品・製品にも波及させることが重要だ。中小企業が賃上げ原資を確保するためにも取引適正化を推進したい。
経済産業相と公正取引委員会委員長は連名で約1700の関連団体に対し、発注企業による買いたたきなどを防止するよう要請したほか、中小企業庁は取引実態を調査する「下請けGメン」を22年度に倍増した。企業庁が推進している、発注企業が取引適正化を宣言する「パートナーシップ構築宣言」への参加企業も9000社を超えている。大手を中心にさらなる参加を促し、中小企業の収益基盤を強化することが求められる。
(2022/5/18 05:00)
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