社説/外国人観光客、入国再開 影響見極め、一段の制限緩和を

(2022/5/27 05:00)

政府は外国人観光客の受け入れを約2年ぶりに再開する。6月1日から現在1日当たり1万人が上限の入国者数を2万人に倍増した上で、10日から2万人の枠内で観光目的の入国も認める。2019年の外国人観光客3000万人超には遠く及ばないが、感染状況を見極めつつ入国制限の一段の緩和を進めてもらいたい。

政府は3月からビジネス目的や留学生、技能実習生の入国を認めていた。観光客の入国を拒んでいたのは先進7カ国(G7)では日本だけで、団体ツアー客などに対象を絞りつつもようやく小さな一歩を踏み出す。

今回の水際対策の規制緩和では、入国者の8割程度が入国時のPCR検査や待機措置が免除されることも一歩前進だ。世界の国・地域を3グループに分け、G7などが属する最も規制が緩いグループには検査や待機を求めない。残る2グループは検査や最短3日間の待機などが求められる場合があるという。

物価高などを背景に国内消費が伸び悩む中、インバウンド(訪日外国人)需要の再開が期待される。円安基調は訪日喚起には追い風で、世界経済フォーラムがこのほど発表した「観光の魅力度ランキング」で日本は世界1位になった。交通の利便性や文化資源が評価された。

日本では新型コロナウイルスへの新規感染者数の増勢が鈍化しつつあり、ワクチン接種や3密回避などの基本行動を守りつつ、入国制限をさらに緩和できる環境を整えたい。

ただ訪日観光客が最も多かった中国はゼロコロナ政策による行動規制が継続しているほか、世界経済はウクライナ情勢に伴うエネルギー価格の高騰などに見舞われている。中国の対応や有事が旅行需要の行方を大きく左右している現状は残念だ。

日本政府観光局によると19年に3188万人だった訪日観光客は、20年4月の入国制限により20年は411万人に急減し、21年は25万人だった。今回の制限緩和を起点にいかに経済正常化に向かうのか。G7の中で出遅れた日本だが、モデルケースとなる施策を模索してほしい。

(2022/5/27 05:00)

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