(2022/6/1 05:00)
雨の季節が近づいている。豪雨災害をもたらす「線状降水帯」が近年多発する。企業は気象庁が6月1日から発表する予測情報を災害レジリエンス(復元力)の向上に役立てたい。
線状降水帯は積乱雲が次々と発生して帯のように連なり狭い地域に流れ込む状態。激しい雨が長時間降り続き、河川氾濫や土砂災害を引き起こす。温暖化による大気中の水分量増加が多発の背景にあるとみられる。
線状降水帯ができるのは地形的な要因だけではない。「台風の外側の雲がかかり続けると都市部でも発生することがある」。危機管理情報を提供するレスキューナウ(東京都品川区)の気象予報士、吉澤健司氏は都市水害の危険性を指摘する。
台風では災害発生が予測される時刻に向けて「いつ」「誰が」「何をするか」を決めて実行するタイムライン(防災行動計画)が有効だ。線状降水帯の予測情報が加味されればタイムラインの実効性を高められる。
気象庁によると、当初は的中率が4分の1程度で、全国を11分割した広域予測にとどまり、発生の半日前から6時間前に発表する。2023年は30分前の予測を可能にし、29年には市町村単位での危険度を地図上に示せるようにする方針という。
生産ラインの停止や従業員の自宅待機は操業ロスを伴う。一方で避難指示が遅れ、従業員が帰宅中に冠水したアンダーパスに車ごと浸かって死亡するケースも相次いでいる。
企業がBCP(事業継続計画)に予測情報を取り入れ、タイムラインの実効性を高めるには予測が外れる「空振り」や発生を予測できない「見逃し」をいかに減らせるかがカギになる。気象庁は予測精度の改善を前倒しで進めてもらいたい。
企業はサプライチェーン(供給網)でつながる取引先との連携が一層重要になる。自社が安全でも取引先が危険地域に含まれる場合は緊密に連携を取り合って対策を講じる必要がある。
線状降水帯が発生しなくても豪雨災害になるケースは珍しくない。発表を待たずに対策を進める姿勢が肝要だ。
(2022/6/1 05:00)
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