(2022/6/8 05:00)
政府は7日、2023年度の予算編成方針などを示した「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)」と岸田文雄政権の看板政策「新しい資本主義」実行計画を閣議決定した。自民党の積極財政派に配慮した歳出圧力の強い内容で財政健全化目標も後退した。党内融和を優先し“岸田カラー”が影を潜めた内容には課題が残る。
骨太の方針は、防衛力を5年以内に抜本的に強化すると時期を明記したほか、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国防費の国内総生産(GDP)比2%以上を目標としていることも併記し、日本も防衛費倍増を目指す姿勢が示された。
ウクライナ情勢や中国・北朝鮮など東アジアの安全保障リスクを勘案すれば、防衛費の増額はやむを得ない判断だ。だが防衛予算の使途より金額が先行する“規模ありき”は否めず、岸田首相が「必要な額を積み上げる」とした方針が覆ったことは財政健全化の観点から残念だ。
25年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化する目標も「25年度」の期限が消えた。健全化目標に縛られ、重要な施策の選択肢を狭めてはならないという、安倍晋三元首相ら積極財政派の歳出圧力が背景にある。
新しい資本主義の実行計画は人的資本、科学技術・イノベーション、スタートアップ、デジタル変革(DX)・グリーン変革(GX)の4本柱に重点投資し、経済格差や脱炭素、労働人口減などの社会的課題の解消を目指す内容で評価できる。産業界の競争力強化を期待したい。
ただ成長の果実をいかに分配するのか不透明さを残した。富裕層優遇とも指摘される金融所得課税の見直しは、株式市場への配慮から見送られている。
与党が7月の参院選を制すれば、岸田政権は向こう3年間、国政選挙がない安定期を迎えると言われる。「黄金の3年」を手にすれば「分配」戦略が再び強調されるのだろうか。来春に任期が満了する日銀総裁の人選も本格化する。参院選後、経済財政運営や異次元緩和の出口戦略で岸田首相が自身の色を出せるのか、実行力を見極めたい。
(2022/6/8 05:00)
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