(2022/6/9 05:00)
現状を踏まえた日本の自前の政策を打ち出すべきだ。
7日に閣議決定した政府の2022年版「エネルギー白書」は、足元の世界的なエネルギー価格の高騰の要因を多面的に分析した。15年以降、原油価格下落に伴って化石燃料の開発投資が減速した。そこに新型コロナウイルス感染症からの脱却に伴う経済回復で各国の需要が一気に増えた。
さらに偏西風が弱かったなど天候不順で再生可能エネルギーが期待通り動かず、ロシアのウクライナ侵攻によって天然ガス供給が減少した。欧州では天然ガス輸入価格が3倍以上になる国が目立つ。日本は2倍以下にとどまり、電気・ガス・ガソリンなどの小売価格の上昇幅も相対的に小さい。
一方、脱炭素の流れでは各国は目標達成に向けた実行段階に突入したと分析。しかしエネルギー価格の異常な高騰という非常事態に「石炭火力の維持など逆の動きも出ている」(経済産業省幹部)という。また「中国のロックダウン(都市封鎖)が需給を動かし、各国の政策に影響する」ような神経質な動きもある。
これらから感じるのは、世界市場が一つになったこと。しかし状況は国ごとに大きく違うという現実だ。日本は他国を手本にするのではなく、自前の政策を進める必要がある。
もともとエネルギー資源の大半を輸入に頼る日本は、原子力発電をいきなり封止したことで一段と脆弱(ぜいじゃく)になった。これと並行して電力・ガスのシステム改革を進めたことが安定的な供給計画を難しくしている。再生エネの大量導入は大いに期待されるが、現実には風力のように理念先行で実績を伴わないものが少なくない。
原発の再稼働を着実に進めれば、化石燃料への依存を大きく抑制できる。その時間的余裕でシステム改革や再生エネの開発・普及を進めるのが本来のあり方であろう。白書は単なる分析ではなく、政策判断の基礎となるものである。政府が目下の危機をやり過ごすだけでなく、対策に踏み出すことを望む。
(2022/6/9 05:00)
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