(2022/6/17 05:00)
米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利の0・75%引き上げを決めた。通常の3倍に当たる0・75%の大幅利上げは1994年11月以来、27年7カ月ぶり。約40年ぶりの記録的な物価上昇を抑制するためには、やむを得ない判断と言える。
ただ大幅利上げは米国経済を減速させかねず、円安がさらに進めば日本経済も失速しよう。岸田文雄政権による第2弾の物価対策は秋の召集が通例の臨時国会を待つことになりそうで、迅速な対策は期待できない。日本企業は十分な警戒が必要だ。
米国では人手不足を解消するための賃上げが製品価格に転嫁され、さらにウクライナ情勢に伴う食品・エネルギー価格の高騰が加わり、物価が著しく高騰している。5月の消費者物価は前年同月比8・6%上昇し、40年5カ月ぶりの高水準だった。FRBが強い金融引き締めに動くのは当然の判断といえる。
懸念されるのは米国の堅調な個人消費の行方だろう。4月の個人消費支出は前月比で0・9%増えたが、3月の同1・4%増から減速した。インフレ退治の金融引き締めが消費に影響し始めたのかが気がかりだ。
米国は景気より物価抑制を優先するが、経済減速を理由に11月の米中間選挙でバイデン政権の基盤が揺らぐようなことになれば、中ロに付け入る隙を与えかねない。また米欧など主要国による利上げは新興国の通貨安と資本流出を促し、日本も円安と輸入物価の上昇が企業・家計のマインドをますます萎縮させないか心配だ。
日銀の黒田東彦総裁は良くも悪しくも政策にブレがない。17日までの金融政策決定会合でも大規模な金融緩和の継続が確認されると見られる。日米金利差の拡大が為替市場に再認識されれば、円安が進みかねない。為替介入も米国の協力なしに実施できないジレンマを抱える。
岸田政権は22年度補正予算に続く第2弾の物価対策を盛り込んだ同第2次補正予算案を秋の臨時国会に提出する見通しで、当面は参院選モード一色になりそう。しばらくは日本企業の円安耐性が試されることになる。
(2022/6/17 05:00)
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