(2022/6/30 00:00)
アマダは環境保全を経営の重要課題の一つと捉え、生物多様性の保全・再生活動を積極推進している。中でも主力工場の富士宮事業所(静岡県富士宮市)では、30年以上にわたって森林の育成と環境保護に取り組んでおり、2021年度には「緑化優良工場等関東経済産業局長賞」を受賞。「緑に囲まれた工場」として、広大な森林と最先端の工場が共存する事業所として同社のモノづくりを支えている。
北東に富士山を望む富士山麓の森林地帯。春には新緑の木々が瑞々しい輝きを放ち、風にそよぐ葉の音とともに野鳥のさえずりも耳に届く。そんな風光明媚な地の一角に、富士宮事業所は立地する。1987年に操業を開始し、アマダグループの板金加工機械、プレス機械の開発、生産を担っている。75万7562平方メートルという広大な敷地面積の内の約6割を森林として残しており、コゲラやカワセミ、サンコウチョウといった鳥類をはじめ、モリアオガエルなどの希少種まで多種多様な動植物が生息する。
「一般的に緑化というと緑を作るイメージだが、ここ(富士宮事業所)では元々の自然を生かしながら緑化を進めてきた」。富士宮管理部の稲垣英俊部長は、同事業所ならではの環境保全活動についてこう言い表す。
アマダは約45年前から、「水と緑と建物の調和」をコンセプトにした緑化活動を展開。工場や展示場などの顧客を迎える施設に、室内緑化や屋上緑化を積極的に取り入れてきた。1998年には伊勢原事業所(神奈川県伊勢原市)で、環境マネジメントシステムに関する国際規格「ISO14001」を取得。それを機に他の事業所でも同規格を取得し、環境保全活動と地域社会との調和を追求して行動することをグループの環境理念として掲げている。
設立時から続く環境保全活動
富士宮事業所についても、設立を決めた当時から「工場設立とともに周辺の森を生かそうという考えがあった」(稲垣部長)という。事業所内の森林を「アマダの森」と名付け、設立当初から森の保全・育成に向けて杉やヒノキの計画的な間伐・枝打ち、静岡県や富士宮市の花木であるツツジ、フジザクラ、カエデの植栽などを行い、森の整備と育成を進めている。現在までに森で確認された植物は962種類に上り、鳥類も56種類という。
また事業所内には、従業員への環境教育エリアとして「環境道場」を設置。事業所の具体的な環境推進活動や森に生息する動植物をパネルや動画で紹介している。地元小学校の社会科見学も積極的に受け入れて教育の場として活用してもらうなど、地域交流という面でも貢献している。
こうした活動が評価され、工場緑化の取り組みなどが優れている工場を表彰する「緑化優良工場等表彰制度」において、2016年に「日本緑化センター会長賞」を伊勢原事業所(神奈川県伊勢原市)とともに受賞。さらに2021年には、同会長賞の受賞者を対象とする「緑化優良工場等関東経済産業局長賞」を受賞した。施設緑化推進室の林景太郎室長は「我々の取り組みは間違っていなかったという自信を持てた」と感慨深げに話す。
グループのモデル工場
富士宮事業所には、アマダグループにおけるモデル工場という側面もある。同事業所で先行して始めた活動や手法が、その後ほかの事業所にも展開され、グループのスタンダードとなったケースも多い。
例えば、AGV(無人搬送車)を使った夜間の部品搬送や作業効率化に向けた画像解析システムなどを試行している。
環境保全の面でも、同事業所の活動と知見を生かす形で、土岐事業所(岐阜県土岐市)に敷地内の湧き水を利用してビオトープ(生物が生息する池)を設置。地元で産出される御影石を周囲に置いており、社員の安らぎの場所としてだけでなく、ときには野生のキツネが顔を出すなど動物にとっても憩いの場となっている。
顧客からの信頼性向上に貢献
富士宮事業所の来場者のほとんどは、同社製品のユーザーもしくは購入検討者であり、「製品が実際にどう作られているか」という点に関心を持って来場している。今後も動植物の生態調査や保全・生育を続けるほか、グリーンインフラ(自然の機能を利用した課題解決)に関する技術も取り入れるなどして、より環境を充実させていく方針。稲垣部長は「アマダの機械が、自然と調和したこの環境で作られているところを訴求し、信頼を高めることに取り組んでいきたい」と意欲を見せる。
(2022/6/30 00:00)