社説/「非財務」の情報開示(下)男女格差なくし、賃金底上げを

(2022/6/24 05:00)

従業員301人以上の企業は、男女間の賃金格差の開示が義務化される。女性活躍を推進することで格差縮小と社会の多様性を推進し、イノベーションと賃金の底上げを促したい。

政府は女性活躍推進法に基づく省令を改正し、7月に施行する。7月以降に締まる事業年度の実績を開示する必要がある。3月期決算企業の場合は2023年3月期の実績が開示対象になる。中堅・中小企業の中にも開示を求められる企業があることに留意したい。従業員101―300人の企業については今後の検討課題で、対象がさらに増えることが期待される。

情報開示は連結ベースではなく企業単体ごとに求められ、男女の賃金格差は絶対額ではなく、男性の賃金に対する女性の賃金の比率を開示する。同様の比率を正規・非正規雇用に分けて開示することも求められる。

女性活躍は企業に必要不可欠とされながら、女性管理職比率は1ケタ台にとどまり、女性の非正規率は男性より高い。この結果、男女の賃金格差は欧米の10%台に対して日本は20%台に達する。男女間の賃金格差の開示も欧米が先行していた。

また欧州連合(EU)は26年末までに、域内の上場企業を対象に全役員の33%以上か、社外取締役の4割以上を女性にすることを義務付けるという。日本も女性登用で先行するEUとの格差を縮める必要がある。

日本の男女50代のそれぞれ3割が独身で、女性の人生も多様化している。これまで日本は中高年の男性を中心に企業経営を担ってきたが、組織や社会の中で女性が担うべき役割を見つめ直すことが労働者人口の減少を緩和させることにもなろう。

また共稼ぎの男女の場合、男性の育児休業の取得率引き上げと職場の理解が少子化に歯止めをかける契機にもなり得る。

政府は同一労働同一賃金制度の徹底はもとより、短時間正社員制度、勤務地限定正社員制度、職種・職務限定正社員制度などの多様な正社員制度の導入を企業に働きかけるという。働き方の選択も柔軟にし、労働市場で選ばれる企業を目指したい。

(2022/6/24 05:00)

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