(2022/7/5 05:00)
社会インフラの脆弱(ぜいじゃく)性が相次ぎ露呈している。猛暑による綱渡りの電力供給に続き、今度は通信障害である。移動通信は生活基盤を超えた社会基盤となり、産業界はデジタル変革(DX)に企業成長を託し、政府の「デジタル田園都市国家構想」も岸田文雄政権の大きな柱に掲げられる。
KDDIによる原因究明はもとより、同社をはじめ通信各社は対策の強化を徹底してもらいたい。再発の防止、あるいは再発しても短時間で復旧できる危機管理体制を模索し続ける対応が政府と業界に求められる。また産業界は電力網や通信網を脅かす台風シーズンを迎え、事業継続計画(BCP)をあらためて確認しておきたい。
KDDIの携帯電話通信網で2日未明に最大4000万回線弱の大規模な通信障害が発生した。復旧作業に40時間以上費やした過去最大の通信障害だ。影響は携帯電話通信のほかIoT(モノのインターネット)関連も最大約150万件に及んだ。
通信障害は2018年にソフトバンク、21年にNTTドモコでも発生している。中でもドコモの件を受け、総務省が通信各社にインフラの総点検を要請していただけに、KDDIは管理体制の不備を指摘されても仕方がない。責任の重さを痛感し、徹底した原因究明と再発防止に向けた対策の構築、影響が及んだ契約者への今後の対応などを急ぐ必要がある。
政府は第5世代通信(5G)の基地局の整備を進め、23年度末の人口カバー率95%の達成を目指している。自動運転や遠隔医療などの実用化に向けた重要なインフラになる。都市部に負けない地方の生産性・利便性を実現するデジタル田園都市国家構想も5Gネットワークが支える。通信障害による混乱は今回のKDDIの比ではない。
デジタル化は、通信が途絶えれば一気に不自由な社会になり、重大な事故を誘発するリスクもつきまとう。二重三重の安全・安心対策をいかに整え、暮らしや産業、社会を変革していくのか。今回の通信障害を教訓に前に進んでいきたい。
(2022/7/5 05:00)