(2022/7/4 05:00)
再生可能エネルギーで発電した電気の固定価格買い取り制度(FIT)が始まったのが2012年7月1日。政府は再生エネの普及させたこの10年の経験を生かし、多くの企業がメリットを受けられる制度に進化させてほしい。再生エネのさらなる普及は電力の安定供給につながるはずだ。
経済産業省によるとFIT開始から21年末までに6554万キロワットの再生エネ設備が新規に稼働した。20年度末の電源に占める再生エネ比率は19・8%となり、12年度から10ポイント上昇した。また、エネルギー自給率は原子力発電が稼働していた10年度の20・2%には届かないが、11・2%まで回復。各地で停止した原発を再生エネが補ってきた。
気候変動対策にも寄与している。日本の温室効果ガス排出量は20年度までに7年連続で減少し、集計を始めた90年以降で最小を記録した。発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない再生エネが普及した効果だ。
太陽光発電に限ればコストも低減した。FIT開始当初はパネル代や建設費を反映し、太陽光が発電した電気の買い取り価格は1キロワット時40円だった。普及により費用が下がった現在は同10円まで低下しており、同10円前後で長期購入する企業も出てきた。ウクライナ情勢の影響で通常の業務用電気は上昇しており、燃料費がかからない再生エネの強みが発揮されている。
一方で課題もある。導入は太陽光に偏重してしまい、風力発電は普及が遅れた。風力は世界全体の導入が7億キロワットを超えたが、日本は約500万キロワットにとどまる。政府は風力の普及も後押し、国内の再生エネのバランスを早急に整えてほしい。
FITを支えるため電気代と一緒に徴収する賦課金が高いという批判もある。政府はエネルギー多消費企業の負担軽減や入札の導入などで対応してきた。めまぐるしいルール変更は事業者に混乱を招いたが、素早い対処は評価できる。30年度までの温室効果ガス排出量46%削減(13年度比)に向け、多くの企業が安価に再生エネを使える環境を整備してもらいたい。
(2022/7/4 05:00)