(2022/7/19 05:00)
米国の長期金利が低下しても円高に振れず、円安基調の相場展開になっている。
米国10年物国債利回りは6月中旬の3%台半ばから足元は0・5%程度低下している。だが円高・ドル安には転じず、市場は世界経済の減速懸念から安全な基軸通貨ドルを買う動きを強めている。為替市場は日米金利差よりも世界経済の先行きを警戒し、リスク回避しているようだ。円安の進行を警戒したい。
米国の6月の消費者物価指数は前年同月比9・1%上昇と約40年半ぶりに急上昇した。人手不足による賃上げに加え、ウクライナ情勢に伴う食品・エネルギー価格の高騰が物価高に拍車をかけている。一段の物価上昇を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)は26、27日に開く会合で大幅な利上げに動く見通しだ。利上げによる米国の景気後退懸念から同国の長期金利は低下基調にある。本来なら円高・ドル安に傾くはずの相場が円安・ドル高で推移している。
米FRBが6月に大幅な利上げに乗り出すとの観測が流れた6月中旬は、米国の10年物国債利回りは3%台半ばと約11年ぶりの高水準まで急上昇していた。日米金利差の拡大が意識され、為替市場は円安・ドル高で推移していた。この1カ月前と比べ、最近の為替市場の反応が変化していることに留意したい。
米国はインフレ退治に苦しんでいるものの、足元の経済は比較的堅調だ。個人消費に足踏みの兆候があるが、雇用情勢は改善傾向にある。一方、ユーロ圏は米国並みのインフレに加え、対米ドルでの通貨安が一段の物価上昇を招き、新興国も自国通貨安を背景に自国からの資金流出が増えており、金融市場は世界経済の減速を警戒している。ドル独歩高は、世界経済リスクを回避するための基軸通貨ドル買いの動きとみられる。
他方、日本が5月まで10カ月連続の貿易赤字であることも円売りを促している。輸出より輸入が多ければ、それだけ円を売ってドルを買う取引が多くなる。為替相場の安定化に向け、日本の国際競争力と潜在成長率を引き上げていきたい。
(2022/7/19 05:00)