(2022/7/26 05:00)
巨額の予算増を、海外調達だけに向けてはならない。
2022年版防衛白書は「ロシアによるウクライナ侵略」として1章を設け、同時に中国とロシアの連携強化を指摘した。一方、米国については日・米・豪州・インドの首脳会談や「インド太平洋戦略」などの動きを紹介した。
両陣営の対立を念頭に、日本周辺で抗争につながりかねない「グレーゾーン事態」が長期化するだけでなく「より重大な事態へと発展」する懸念を示している。わが国産業界としても、今後の貿易や直接投資への影響を見極める必要があろう。
白書は、こうした周辺環境に対し「自らの防衛力とともに、日米同盟関係を強化」という方針を明確に示した。防衛予算については、21年度補正で過去に例のない正面装備の調達を手当てしている。さらに岸田文雄首相は「防衛費の相当な増額を確保する決意」を米側に表明しており、国際公約化した。
わが国の財政事情は引き続き厳しいが、安全保障をゆるがせにはできない。経団連はじめ産業界も必要性を理解しており、当面、防衛費の急ピッチの増額が続くだろう。重要なのは、それを効率的に使うことだ。
ステルス戦闘機や無人偵察機、空中給油機などの最先端の防衛装備品の多くは、米国製である。短期間で装備を充実させるには、実績のある機器の輸入に頼るのもやむを得ない。すべてを自国開発にすることも費用対効果の面で難しい。
しかし防衛力強化には、自国の防衛産業の底上げが欠かせない。次期戦闘機「F3」の開発前倒しなどで、まだ獲得していない技術の習得を急ぐべきだ。宇宙・サイバー・電磁波などの新領域に対処するには、これまでの防衛産業に限らず多くの企業に手を広げるべきだ。
人材の面でも民間企業との連携が望ましい。自衛隊の人員は従来型の武器弾薬の専門家が多く、新領域については民間の知見が手助けになる。
白書においても、こうした視点で官民の連携を取り上げ、将来展望を示してもらいたい。
(2022/7/26 05:00)
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