(2022/8/5 05:00)
米国による東アジアへの強い関与は、この地域の安全保障を維持する上で極めて重要だ。ただ中国へのけん制が挑発と受け止められ、偶発的な軍事衝突を誘発するような事態は回避したい。バイデン米大統領による台湾への軍事介入発言や、ペロシ米下院議長の台湾訪問など、米中関係を緊迫化させる言動が相次ぐ。米国の「戦略的曖昧さ」でいつまでも中国を抑止できるのか、効果を見極める時期を迎えている。
バイデン大統領は5月23日の日米首脳会談後の会見で、中国による台湾侵攻の際、米国が軍事介入するかを問われ「イエス」と明言した。米国が、直接的な軍事介入を避けているウクライナ情勢以上に、台湾を重視していると受け取れる発言だ。この発言を受け、ホワイトハウス高官は台湾をめぐる政策に変更はないと釈明。翌24日にはバイデン大統領自身が同様の質問に「ノー」と修正している。
大統領の失言なのか、意図的な発言かは別にして、結果として軍事介入するかを明言しない玉虫色の「戦略的曖昧さ」を残しつつ、中国を強くけん制したと言える。ただ、これまで曖昧戦略が効果的だったのは米中の軍事力に格差があったためと見られ、軍事力に自信を示す現在の中国抑止となるかは検証が必要だろう。ウクライナ情勢が中国による台湾有事を想起させるだけに、有効な中国抑止策とは何かを模索したい。
米連邦議会のペロシ下院議長の訪台は、中国側の強いけん制を退けて行われた。蔡英文総統との3日の会談では、一つの中国政策を尊重しつつ、台湾と世界の民主主義を守ることを強調した。「米国は台湾を見捨てない」との表現は、台湾への関与をこれまで以上に強める印象を与えるが、サリバン米大統領補佐官は7月22日に台湾をめぐる曖昧戦略は維持することを明言している。
中国は台湾を取り囲む軍事演習や台湾への経済制裁に乗り出した。米国も台湾東方に艦艇を配備し、中国をけん制している。両国の緊迫化が新たな中国抑止のあり方を問いかけている。
(2022/8/5 05:00)
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