(2022/8/9 05:00)
ロシアは極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」を引き継ぐロシア企業を新設した。日本は新会社に引き続き参画し液化天然ガス(LNG)の権益を守るべきだ。同時に日本企業が輸入しているLNGの契約を新会社との間でも同条件で継続できるよう努めてもらいたい。
大統領令によると、ロシア企業の設立から1カ月以内に、日本企業は今の出資割合で新会社の株式取得に合意するかどうかを通知しなければならない。サハリン2を運営していたサハリンエナジーに三井物産が12・5%、三菱商事が10%出資している。サハリン2の新会社への移管は西側の経済制裁に対抗して取られただけに不合理な条件を付けてくる可能性は十分ある。それを十分見極めることは重要だが、可能な限り権益を保持することが国益にもつながる。
サハリンエナジーはロシア政府との間でPSA(生産物分与契約)を結び、開発鉱区を決め生産された原油や天然ガスの取り分を決めてきた。権益はいわば出資企業の取り分だが、日本企業の出資分を単純に日本に輸出できるわけではない。JERAや東京ガス、九州電力などの日本のエネルギー企業は、サハリンエナジーと長期契約を結びLNGとして輸入している。契約期間は長いもので10年以上残っている。新たな運営会社が長期契約を引き継ぎ、残り期間の契約を履行するよう正当性を主張する必要もある。
ただ日本の2社が権益を確保し、契約を継続できてもリスクは残る。契約を延長する際、法外な条件を突きつけられる可能性は高い。サハリンエナジーに27・5%出資していた英シェルは全面撤退を決めており、シェルなき新会社が安定的に生産を続けられるかも疑わしい。
日本のLNGのロシア依存は9%弱。他国との契約条件の変更やスポット契約により、ぎりぎり代替調達できる範囲ではあるが、安定調達には新たなLNGプロジェクトへの参画も考えておく必要がある。LNG開発は足が長く、巨額の費用がかかる。民間任せではなく、官民一体で取り組むべきだ。
(2022/8/9 05:00)
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