(2022/9/2 05:00)
「この時だけは“飛び石”を打った」。亡くなった稲盛和夫さんは京セラの通信事業参入をそう表現していた。「経営多角化は企業発展に不可欠だが、まったく関連のない事業に飛び石を打てば失敗する」というのが稲盛さんの持論だったが、1984年に第二電電(現KDDI)の設立に踏み切った。
NTT民営化・通信自由化から節目の20年を迎えた2005年、京都の京セラ本社でインタビューさせて頂いた。
巨大な電電公社(現NTT)と対峙する市場には、どの企業も参入しようとしない。「(このままではNTTの)1社独占が続く。無謀を承知でチャレンジ精神から名乗りを上げた。通信料金を安くしないと情報化社会の中で国民負担が重くなるとの思いがあった」という。
00年には国際通信のKDD、トヨタ系の日本移動通信(IDO)との3社合併を実現。NTT追撃に向け、小異を捨てて大同につくよう両社を何度も説得した成果だ。
「京都の中堅部品メーカーの私が提唱した第二電電が、今日のKDDIに成長したことを思うと感無量だ」と話されていた。経営のカリスマが異例の飛び石を打っていなければ、通信市場は今ほど発展していなかったに違いない。
(2022/9/2 05:00)
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