(2022/9/7 05:00)
英国のジョンソン前首相の後任に、与党・保守党のリズ・トラス前外相が6日(現地時間)就任した。同国の女性首相は史上3人目。喫緊の課題は、危機的ともされる高い物価上昇率の抑制と、マイナス成長に沈んだ経済の浮揚だ。新首相は前首相の対ロ・対中強硬路線を受け継ぐものの、長期の経済停滞に陥ればロシア経済制裁の見直し論が台頭しかねない。西側諸国の基盤と結束を強固にする上でも、英国経済を軟着陸させる施策を慎重に講じてもらいたい。
英国のインフレが深刻だ。7月の消費者物価指数は前年同月比で10・1%の上昇と約40年ぶりの高水準にある。中央銀行のイングランド銀行は10月に上昇率が13・3%まで引き上がると見通し、年内に景気後退する可能性がある。すでに4―6月期の実質成長率は年率換算でマイナス0・3%と水面下に沈んでいる。
欧州によるロシア産化石燃料の輸入制限と、ロシアによる欧州への天然ガスの供給削減、さらに英国の欧州連合(EU)離脱に伴う移民制限による人手不足が人件費の上昇圧力を高めている。英国は6月にロシアからの燃料輸入が初めてゼロになるなどロシア依存度は低いものの、市況悪化が英国経済には大打撃となっている。英政府は平均的家庭の光熱費が10月に年換算で3549ポンド(約57万円)と予測、現在より8割も高騰する。秋以降が正念場となろう。
イングランド銀行は8月4日に政策金利を0・5%上げ、6会合連続の金融引き締めを行ったがインフレ抑制の兆しはない。トラス新首相は予定されている法人増税の凍結や国民保険料の引き下げ、光熱費課税の一時停止などの経済対策を1週間以内にまとめる。だが景気浮揚に軸足を置いた施策が一段の物価上昇を招く懸念が残り、施策が実現するかも不透明だ。難しい経済財政運営を迫られよう。
英国経済が軟着陸し、EU離脱による市場縮小の副作用を環太平洋連携協定(TPP)加盟で緩和する、といったシナリオを描きたい。世界経済や安全保障の観点からも、新首相の手腕が問われることになる。
(2022/9/7 05:00)
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