社説/進む円安・物価高 大手も価格転嫁「宣言」に参加を

(2022/9/8 05:00)

円安が進行している。欧米の中央銀行は9月も大幅な利上げに動く見通しで、円売り圧力が一段と強まることが懸念される。輸出関連企業に利点がある円安も、中小企業など内需主導企業には輸入物価上昇のマイナス面が経営を直撃する。下請け企業が仕入れ価格の高騰を取引価格に反映させる「価格転嫁」は不十分とされる。大企業の積極的な取り組みを期待したい。

7日の東京外国為替市場は一時1ドル=144円台まで下落し、1月平均の同115円台から約29円も円安に振れた。歴史的とされる高い物価上昇を抑えるため、欧米の中央銀行は「中立金利」の上限ないし中立金利を超えた水準まで政策金利を引き上げる見通しだ。中立金利は景気を加速も減速もさせない金利水準で、欧米中銀は景気より物価抑制を優先している。

欧州中央銀行(ECB)は8日、米連邦準備制度理事会(FRB)は20、21日の会合で、それぞれ政策金利の0・75%引き上げが取り沙汰されている。米FRBは7月の利上げですでに中立金利に到達している。英イングランド銀行も15日に0・5%の利上げに動くことが予想されている。欧米の一段の金融引き締めが想定される中、円を買う材料は見当たらない。

輸入物価のさらなる上昇が懸念される中、日本政府は9日に追加の物価対策をまとめる。政府による輸入小麦の業者への売り渡し価格を10月以降も据え置き、9月末に期限を迎えるガソリン価格の抑制策も10月以降に延長する。また生活困窮者対策や中小企業による不十分な価格転嫁の対策も打ち出す。中でも価格転嫁は、下請け企業と大企業との取引適正化に課題を残しており、是正を急ぎたい。

経済産業省・中小企業庁によると、2割の下請け企業が全く価格転嫁できていない。発注企業が下請け企業との取引適正化を宣言する「パートナーシップ構築宣言」の登録企業1万2200社超(8月5日時点)のうち、大企業は820社程度にとどまるという。円安進行は中小企業には悩ましいが、取引適正化を促す好機としたい。

(2022/9/8 05:00)

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