(2022/10/25 05:00)
異例の3期目入りを決めた習近平総書記(国家主席)の暴走に警戒したい。最高指導部をイエスマンで固め、4期目入りも視野に入れる習氏の首に鈴を付けるような非習派は指導部に存在しない。個人支配を強めた習氏は祖国統一には武力行使も辞さない意向を示す。ただ経済分野で世界と中国の相互依存の必要性に言及したのは救いだ。隣国・日本は東アジアの安全保障の確保に向け、防衛力強化と同時に交易と間断のない外交により最悪の事態を回避したい。
23日に発足した最高指導部は政治局常務委員7人から成る。68歳退任の慣例を破った69歳の習氏を筆頭に、習氏の側近4人が新メンバーに加わり、習氏と距離を置く常任委員は一掃された。7人に50代はおらず、4期目入りを目指す習氏の新体制に後継者は見当たらない。あと10年君臨する習氏と向き合う覚悟が民主主義陣営に求められる。
内憂外患に直面する中国の迷走が懸念される。習氏は自由や民主に理解があった胡錦濤前政権を否定し、鄧小平時代の改革開放路線からも決別した。改革開放による経済格差を許容しない「共同富裕」は、ITや不動産業などの民間企業を規制で縛り、拘泥するゼロコロナ政策に国民の不満は募る。7月の16―24歳の失業率は約2割に達し深刻だが、今回の共産党大会では習氏への権力集中や政治理念が先行し、今後の世界経済に大きな懸念を残したのは残念だ。
中国は人口減に加え、不動産事業の拡大を通じた成長戦略も限界を迎えつつある。中国が世界経済をけん引する力は弱くなり、米国との覇権争いに終わりはない。習新体制は権威や政治理念だけでは内憂外患が癒えないことを肝に銘じたい。
習氏の国家目標「中華民族の偉大な復興」は中国を国際秩序の中心に位置付け、祖国の完全統一を目指すものだ。台湾有事に強く警戒する必要がある。日米は同盟強化と同時に、中国との交易や対話の継続を通じて習氏の暴走を阻止したい。19年12月以降行われていない対面での日中首脳会談を早期に開催し、まずは意思疎通を深めたい。
(2022/10/25 05:00)
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