社説/あす米中間選挙 ”ねじれ議会“政策運営に懸念も

(2022/11/7 05:00)

バイデン米大統領のこの2年が評価される中間選挙が8日に実施される。連邦議会の上院は与野党が拮抗(きっこう)し、下院は野党・共和党が優位とされる。大統領と上下両院の過半を与党・民主党で独占する“トリプルブルー”(青は民主党のシンボルカラー)の維持は難しく、バイデン大統領は「ねじれ議会」により機動的な政策運営が制約される可能性がある。共和党の躍進が米国経済をさらに減速させることはないのか、注視したい。

選挙戦の争点は歴史的なインフレや中絶の権利、移民問題など。大企業への課税強化で格差を是正したい民主党に対し、共和党は減税要求の声が相次ぐ。連邦最高裁が人工妊娠中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を破棄した問題では、民主党は同判決を法制化する連邦法の成立を目指し、共和党は最高裁の判断を支持する。共和党が犯罪の温床と見なす移民政策については、民主党は深刻な人手不足の緩和策として寛容な姿勢を示している。

バイデン政権は大企業への課税強化や薬価引き下げなどを盛った歳出・歳入法を8月に成立させたが、予算の先議権を持つ下院で共和党が過半を占めれば施策の修正を迫られる可能性がある。共和党が主張する減税はむしろインフレを助長することにも留意したい。移民政策も人手不足の解消につながらなければ、賃上げとインフレを促し、米国の利上げは終わらない。円安の長期化が懸念される。

他方、共和党内には、自国第一主義に傾き、ウクライナ支援の予算を減額すべきとの声も聞かれる。バイデン大統領はインフレへの批判を回避する狙いもあってか、中国・ロシアが脅かす民主主義を堅持する姿勢を強調し、国際秩序の維持の重要性を訴えている。ウクライナ支援の各国の結束を乱しかねない施策は慎重な対応を求めたい。

「ねじれ議会」は決して珍しくなく、二大政党下では民主主義が有効に機能している証左との指摘もある。米国社会の分断解消と国際秩序維持に向け、与野党が選挙後に踏み込んだ議会審議に臨むことを期待したい。

(2022/11/7 05:00)

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