(2022/11/17 05:00)
インドネシア・バリ島で開かれていた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が16日、首脳宣言を採択して閉幕した。首脳宣言はロシアのウクライナ侵攻をほとんどの国が強く非難したと強調し、甚大な人的被害と世界経済の悪化を招いたとロシアを批判した。ただ参加国の中には西側諸国と違った見方や異なる評価もあったと併記し、ロシアや中立的立場の新興国に配慮した苦肉の首脳宣言となった。分断が鮮明なG20の存在意義があらためて問われている。
首脳宣言はウクライナ情勢を念頭に、核兵器の使用や威嚇も認めないことも盛り込んた。ロシアによるウクライナ侵攻はエネルギーや食料の価格高騰を増幅し、サプライチェーン(供給網)を寸断させるなど世界経済の悪化を招いたとの懸念も各国は共有した。ただロシア側の要求を受ける形で、こうした見方とは異なる評価があったことも併記された。G20が西側諸国、中立国、ロシアの3極に分断している現状をあらためて鮮明にする宣言となったのは残念だ。
会期中、ロシアを激しく非難する西側諸国に対し、中国やインドはロシアを名指しで批判しない。中国やインド、新興国の一部はロシア制裁の抜け道となっており、機能不全に陥っている。結果、首脳宣言は全参加国・地域の意見を書き記した議事録のような内容にとどまった。
ただ、新興国もウクライナ侵攻の早期停戦を求めている。エネルギーや食料の高騰に加え、欧米の金融引き締めによる自国通貨安が輸入物価の一段の高騰と資金流出を招き、経済減速が深刻化しつつある。西側諸国はインフレ抑制に向けた金融引き締めのペースを適切に調整し、新興国経済への影響に目配りすることも求められる。新興国を西側に引き寄せ、ロシア制裁の抜け道を狭める必要がある。
西側諸国はウクライナ軍事支援に必要な財源を確保する上でも物価と景気のバランスに配慮したい。戦争の長期化は世界経済を一段と減速させる。ウクライナ支援“疲れ”が顕在化しないよう、西側諸国は結束を再確認しロシアと向き合いたい。
(2022/11/17 05:00)