社説/税制改正の課題(上)「車」税収減も財源確保は慎重に

(2022/12/15 05:00)

与党が16日の決定を目指す税制改正大綱には、電気自動車(EV)の普及を後押しする内容が盛り込まれる。燃費性能に応じて重量税(新車登録時と車検時の課税)を減免する「エコカー減税」を延長するほか、この減免措置を受けられる燃費基準を段階的に引き上げ、ガソリン車からEVへの移行を促す。ただEV化の促進はガソリン税などの税収減に直結する。中長期的にEVに新たな税負担を課す案も政府内で浮上している。アクセルとブレーキを同時に踏まないEV税制を実現することが今後の大きな課題となる。

エコカー減税は重量税を4段階で25―100%減免する。2023年4月末に期限を迎えるこの措置を同年12月末まで据え置く。半導体不足などで新車の納期が遅れている事態に配慮した措置という。その上で、24年1月からエコカー減税を受けられる燃費基準を段階的に厳格化し、ガソリン車からの移行を促す。現在30年度目標の60%とした燃費基準の最低ラインを24年1月から70%、25年5月―26年4月末に80%に引き上げる。エコカー減税は対象を厳格化しつつ3年延長する形になる。

ただガソリン車が減る一方でEVが本格的に普及すれば、自動車関連税収は目減りする。政府税制調査会はガソリン税の減収を見据え、走行距離に応じたEVへの新たな課税案も示されている。また排気量に応じて毎年支払う「自動車税種別割」は、排気しないEVへの課税が10段階(2・5万―11万円)のうち最安値の2・5万円に設定されている問題もある。モーターの出力能力に応じてEVへの課税を強化する案などもある。

ただEVへの課税強化は、EV普及の妨げになると自動車業界は強く反発する。政府は35年までに新車販売の全てをEVなどの電動車にする目標を掲げているものの、現在は4割程度にとどまる。EV課税は業界を交えた議論を深め、実施時期も含めた最適解を中長期の視点で模索したい。当面はガソリン車への優遇を減らしつつ、EVへの移行を促す施策を優先することを政府・与党に求めたい。

(2022/12/15 05:00)

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