(2023/2/16 05:00)
経営者保証(経営者の個人保証)が不要な融資制度が3月から始まる。同保証はスタートアップの創業や中小企業の事業拡大にとって大きな阻害要因だった。同保証に依存しない融資慣行を確立することでイノベーションを促し、日本の国際競争力の向上につなげたい。
企業が融資を受ける際に経営者が連帯保証人となる経営者保証は、倒産した際に経営者が住宅・不動産、車などの資産を差し押さえられるリスクを伴う。このリスクが軽減され、創業や新規事業参入、さらに事業継承などを行いやすい環境が整う。スタートアップや中小企業の挑戦を促す効果に期待したい。
経済産業省、金融庁、財務省は2022年末に「経営者保証改革プログラム」を公表した。3月からは、創業5年以内のスタートアップに経営者保証を求めない新たな信用保証制度(保証上限額3500万円、全額保証、無担保)を始める。4月からは金融機関が経営者保証を求める場合はその理由を説明することが義務化される。安易に経営者保証に依存する融資慣行を是正する効果が期待される。
24年4月には、創業5年を超えた中小企業でも経営者保証の解除を選択できる信用保証制度を創設する。現在も一定の要件(法人・個人の資産分離、財務基盤強化、経営の透明性確保)を満たせば同保証を解除できるが、要件を全て満たさない場合であっても、保証料の上乗せなどで解除できるようにする。
中小企業は経営者保証解除の前提としてガバナンス強化が求められる。このため、中小企業の収益力改善などを促す全国47都道府県の「中小企業活性化協議会」がガバナンス体制整備を支援に追加する。脱・経営者保証は経営健全化に向けた管理体制を築く好機と受け止めたい。
不動産担保に依存しない新融資制度「事業成長担保権(仮称)」にも期待したい。動産や事業の将来性などに担保権を設定できる制度で、23年度中に法案が国会に提出される。資金調達手段が多様になるスタートップや頑張る中小企業が日本経済の底上げ・再生を担いたい。
(2023/2/16 05:00)
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