(2023/2/23 05:00)
武力で現状を変更しようとするロシアのウクライナ侵攻は、「台湾有事」を想起させる。安全保障問題が欧州にとどまらず、東アジアでも現実化しかねないことを強く再認識させた。
日本の防衛戦略は大転換を迫られ、北大西洋条約機構(NATO)は中国を安保上のリスクに加えた。世界が分断する中、西側諸国は同志国を拡大し、国際秩序を再構築する必要に迫られている。ただ日本は隣国・中国とは「対立」と「協力」のバランスを取る必要があり、安保と経済連携を両立させる難しいかじ取りが求められる。
岸田文雄政権は反撃能力の装備なしに安保を担保できないとの考えに傾き、防衛費も5年で巨額の43兆円を拠出する。中国は覇権主義的な動きを緩めず、台湾有事への準備を2027年までに終えるとの米中央情報局(CIA)の見方もあり、日本の防衛転換もやむを得ない。ただ反撃能力の有効性や防衛財源の課題も残す。国民が安心・納得できる防衛体制とすることが岸田政権には求められる。
日中の防衛当局間で今春にもホットラインが開設される。日本は最悪の事態を回避する外交努力も重ねたい。世界経済に深く溶け込んだ中国とは意思疎通を継続し、「対立」ばかりでなく、安保分野以外での「協力」関係を推進することが肝要だ。
先進7カ国(G7)は24日にオンライン首脳会議を開き、ロシア制裁とウクライナ支援の強化を確認した首脳声明を発表する予定だ。G7の揺るぎない連帯とウクライナの攻勢はロシアを想定以上に疲弊させている。中国に祖国統一が容易でないことを示すことにもなり、東アジアの安保の確保につなげたい。
G7議長国の日本は、ロシア寄りとされるアフリカ諸国やロシア制裁に加わらない東南アジア諸国を含む「グローバルサウス」との関係強化も主導したい。日本は国連安全保障理事会の非常任理事国でもあり、機能不全に陥っている安保理の改革を進める上でも、同志国を増やしていく必要がある。対中ロを見据えた新たな国際秩序を模索する“侵攻2年目”としたい。
(2023/2/23 05:00)
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