(2023/3/8 05:00)
日本発明振興協会(石井卓爾会長)と日刊工業新聞社共催の「第48回(2022年度)発明大賞」に22件の発明が選ばれた。発明大賞は発明考案を通じて産業の発展や国民生活の向上に寄与した資本金10億円以下の中堅・中小企業や個人、グループに贈られる。表彰式は13日に東京都港区の明治記念館で開く。
発明大賞 本賞
布製伸縮ヒーター=三機コンシス(代表取締役・松本正秀氏)
繊維1本ごとが独立して発熱する布製ヒーター。導電繊維を編んだニット構造で、柔軟性と伸縮性に富む。発熱部と電線部分の接続には開発した縫製でき耐久性に優れた伸縮電線を使っており、既存設備での縫製加工ができる。面全体が発熱できるため温度分布が均一であり、肌に密着して使えるため低温火傷のリスクが低く消費電力を抑えた設計が可能になる。従来品は発熱線部分が高温になり、面全体が均一に暖かくなる構造ではなかった。また柔軟性に乏しく、1カ所の断線で使用不可になるといった課題があった。
発明した製品のヒーター以外の用途として、タッチパネルや人感センサーといった静電容量センサーへの応用が期待できる。(三機コンシス=東京都江戸川区)
発明大賞 東京都知事賞
ハチミツ等を糸引きなく充填する自動充填機用ノズル=秋元産機(社長・秋元英希氏)
液切れが悪く糸引きが目立つ粘度の高い溶液などを、完全に切り離して充填できる自動充填機用ノズル。液の流れを阻害しないように設計された内部の構造は、すべて職人の手作業で作られる。
さらに液切れを良くするために先端部分には刃物に使われる固い素材を使用している。合わせ加工を施すことで高い“切れ味”を実現し、エアブロー無しに、また液汚れ無しで充填した液をシャープカットできる技術を開発した。
ユーザーの要求に対応する充填機を供給でき、化粧品や医薬、食品といったさまざまな業界での有用性が広まっている。海外への普及も見込まれる。(秋元産機=東京都葛飾区)
発明大賞 日本発明振興協会会長賞
高性能ポリエステル延伸糸製造設備=TMTマシナリー(取締役TMTグループR&Dセンター長・橋本欣三氏ほか2人)
合成繊維の製造工程で、糸を温めた後に一気に引き延ばす工程の改良設備。5本の大径短尺加熱ローラーを使って、糸をS字掛けすることで短時間で加熱できる仕組みを取り入れた。
また潤滑油の塗布ノズルの形状を改良したことで水分量の少ない高濃度の潤滑油が使えるようになり、生産量が従来よりも33%向上した。装置の小型化や省人化、省エネ化も実現した。
合成繊維の延伸糸は衣類だけでなく、自動車産業や建築・医療関係などの分野にも幅広く使われている。発明した設備はほぼ輸出されているが、販売実績は年間約100億円(6年間の平均実績)にのぼる。(TMTマシナリー=大阪市中央区)
発明大賞 日刊工業新聞社賞
動的振れ測定装置と振れ調整ホルダ=大昭和精機(先端技術開発部部長・矢内正隆氏ほか5人)
(2023/3/8 05:00)