第48回発明大賞、受賞製品・技術のポイント 考案功労賞

(2023/3/8 05:00)

考案功労賞(50音順))

搬送装置及び搬送方向変更装置=伊東電機(会長・伊東一夫氏ほか3人)

前後左右、斜めと希望する方向・角度に搬送できる仕分け装置。特定の2方向に仕分けする従来の装置に対し、複数の仕分け用のボールを任意の角度に切り替え、搬送物を素早く仕分けすることが可能である。ボールは主回転体と副回転体で構成し、回転のための駆動手段と向きを変える旋回手段を持たせた。搬送物を停止させることなくボールの切り替えと並行して移動させることや、搬送物の高さを変えずフラットに分岐させることにより搬送処理能力の向上を実現させた。構成が簡素で部品もワンタッチ式で組み込め、メンテナンスも容易である。(伊東電機=兵庫県加西市)

考案功労賞

コアレスモータ用コイルの製造方法=UNO(代表取締役・宇野禎倫氏)

従来より小型ながら高出力のコアレスモーターとその製造法を確立した。従来のコイル構造では出力を上げるためにモーターを長くする必要があった。そのためコイルに無駄な領域ができてしまうが、これを空いているスペースに折り曲げることで従来の3分の1の長さで同等の出力を実現した。必要となる二重構造のコイルの形成工程を新たに開発した。モーターの振動や騒音が減り、また、ローターがさらに軽くなるため立ち上がりスピードも向上した。細かい制御が可能で、ロボットの駆動モーターやポータブル駆動装置などに利用できる。(UNO=青森県黒石市)

考案功労賞

組織分割用治具=ウミヒラ(専務取締役・海平和男氏)

がんなどの針生検において同じ生体組織で病理検査と遺伝子検査をするため、採取された組織を熟練者でなくとも容易かつ均一に複数に分割できる治具。位置決め機構とガイド部を備え、針生検組織を湾曲、蛇行させずに針形状に沿った形で載置でき、正確に中央部から二分割できる。これまでは同じ針生検組織を用いて光学顕微鏡分析と分子生物学的分析の両立はできなかった。特別な生検針を使わず、ベッドサイドで容易に使用できる安価なキットとして提供する。従来、分割には相当の熟練と一般の医院内では利用できない機器が必要だった。(ウミヒラ=京都市南区)

考案功労賞

糊や接着剤を使わない組立式の折り紙食器=奥村印刷(デジタル印刷事業部 取締役常務執行役員・山田秀生氏)

シートに切れ込みと筋押し加工をすることで、のりや接着剤、留め具などを使わずに、強固な組み立て式の紙容器を実現した。簡単な折り曲げだけで誰でも簡単に組み立てられる。厚さ0・42ミリメートルのA4判で環境に配慮した耐水耐油耐熱用紙を採用した。非使用時はシート状でかさばらず、100人分の食器も厚さ45ミリメートル。梱包時の緩衝材も不要で、大量備蓄や搬送性に富むため、防災用品として優れている。使用後は元のシート状に戻せる。カップ、カトラリー付きの皿、丼を考案し、汁物を含むあらゆる料理に適応する容積、強度を持たせた。(奥村印刷=東京都北区)

考案功労賞

歯車センサーを用いた過負荷保護装置=カワデン(常務取締役・田中丈二氏ほか2人)

電動弁のアクチュエーターの減速ギアに歯車センサーを設置し、歯車の回転速度変化から簡単かつ迅速にバルブの過負荷やロック状態を検出。タイムリーにモーター停止、過負荷警報を出し、バルブやアクチュエーター機構を保護する。汎用の近接センサーを用いて歯車の歯先と歯底が交互に通過する周期を計測し、基準値と比較して回転速度変化を捉える。シンプルかつ安価で、既存製品に簡単に取り付けられる。従来のタイマー手段は開閉時間経過までロック状態を検知できず、モーター電流値を検出する方法では複雑で高度な検出手段が必要だった。(カワデン=大阪市此花区)

考案功労賞

汎用型人工知能の実装に関する発明=Creator’s NEXT(代表取締役・窪田望氏)

最適解法予測をショートカット演算し、圧倒的に計算コストが低く効率的な人工知能(AI)開発を実現するライブラリーを提供する。同社が取得したリアルデータプラットフォームおよび量子コンピューターや深層学習に関する特許を用いた。全てのAI開発現場で適用可能。専門知識を持つエンジニアによる手動開発のため実行スピードが遅いという従来のAI開発の課題を解決する。汎用型AIで開発しており、多様な市場にリーチしやすく、顧客のコストも抑えられる。自動運転のセキュリティーや不良品判定などで頑健性や高精度を実現した。(Creator’s NEXT=東京都港区)

考案功労賞

凝縮液排出装置=ゼットエンジニアリング(代表取締役・村上仁士氏)

超多段式のスチームトラップで、オリフィス孔の異物詰まりを防止しつつ、ドレイン排出量の増減への適応性を高めた。偏心孔を持つオリフィスプレートを採用した多段オリフィス式凝縮排出装置により、蒸気のシール効果を確実にし、蒸気漏洩が発生しない範囲を拡大した。凝縮水の変化が激しいバッチプロセスにも適用できる。多段構成のため、小排出量型でも異物詰まりが発生しにくい1ミリメートル以上のオリフィス径にでき、可動部位を持たない凝縮水排出装置を実現。異物詰まりによる保守作業の負担を大きく軽減する。排出装置の小型化も可能。(ゼットエンジニアリング=東京都江戸川区)

考案功労賞

長尺スポンジシール貼付装置=豊臣機工(代表取締役社長・伴雅紀氏ほか2人)

部品同士の密閉性を確保するために用いられる柔軟で長尺のスポンジシールを自動で部品に貼り付ける装置。従来は作業者が剝離紙を取り、部品に沿わせ手で貼り付けていた。熟練作業者の手の動きや指先の使い方をヒントに、支え手となる保持部、シールの方向を変える案内部、シールを押圧する押圧部を装置先端に備えた。これらを別々にすることでシールのずれを抑制し、部品の適用領域も拡大した。産業用ロボットを用いてスポンジシールを安定して自動で貼り付けられるようになり、作業者の負担軽減、貼り付け不良による廃却ロスを減らす。(豊臣機工=愛知県安城市)

考案功労賞

水車位置を自動で変更が可能な水力発電装置=バンブーケミカル研究所(代表取締役・鶴羽正幸氏)

河川や用水などに流れる水を利用した水力発電機において、天候により常に水位が変化する中で、どのような水位条件でも最大の発電効率となる水車の位置設定を実現した。こうした小水力発電では無人で昼夜の連続運転や安定稼働が求められるが、従来は水車位置が固定され、水量や水位の変化に対して最適な発電効率を得られなかった。また、洪水などで水位が異常に上昇したり、制御システムに異常が発生したりした場合には、制御系で自己診断して水車を安全な高い位置に自動で退避する機能を持たせ、水車装置の破損を防ぐことができる。(バンブーケミカル研究所=徳島県阿南市)

考案功労賞

電力供給切替装置及び電力供給システム=船橋総行(社長・二宮正氏)

集合住宅などの駐車場における複数の電気自動車(EV)への電力供給切替装置(EVロータリー)。充電するEVを複数のグループに分けて一定時間ずつずらして充電することにより、同じ台数のEVを従来の充電器接続で充電する場合に比べ、3分の1の基本電気契約に抑えることができる。プログラムは本体への直接入力とし、通信接続トラブルの影響を受けない。EV充電設備導入コストを削減してユーザーやマンション管理者などの経済負担を下げるとともに、電力の消費を平準化することで電力会社や発電所の負担軽減にも寄与する。(船橋総行=千葉県船橋市)

(2023/3/8 05:00)

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