第48回発明大賞、受賞製品・技術のポイント 発明功労賞

(2023/3/8 05:00)

発明功労賞(50音順)

バッテリーTIG溶接機=育良精機(常務取締役開発事業部長兼研究所所長・大槻芳朗氏)

バッテリーを搭載し、高品質な溶接仕上げができる溶接機。小型軽量で高出力が出せるリチウムイオン電池(LiB)を溶接機内部に搭載。内部電池からの給電で動作でき、外部電源がない現場でも溶接可能になった。電磁遮蔽(しゃへい)構造を内部に設け、高周波高電圧発生時のノイズを抑え、電池駆動式として初めて高周波高電圧スタート式を採用できた。母材に電極を接触させず溶接が始められ溶接欠陥がない高品質の溶接ができる。

騒音や排ガスを排出せず周辺環境や人体に配慮した。また手棒溶接にも対応した。(育良精機=茨城県つくば市)

発明功労賞

水位の上下で吐出し量を増減させる雨水ポンプ=石垣(ポンプ・ジェット事業部技術本部設計部ポンプ設計課技師・山科健一氏)

大雨などの増水時の浸水対策として、雨水を河川に強制排水する雨水ポンプ。排水先からの逆流を防ぐポンプゲート施設などに設置される。水位の上下に応じ滑らかに空気を吸い込みながら運転し、空気を吸うことで雨水ポンプは自ら吐き出し量を増減させる。低水位状態での連続運転が可能となり、水路の貯留能力を最大限活用した浸水低減が可能となる。電気的制御が不要なため信頼性が向上し、建設や維持管理に関するコストを抑えられる。さらに既存の水路を活用するため、建設コストの削減や工期の短縮なども期待できる。(石垣=東京都千代田区)

発明功労賞

吐出される液体の反力により首振り運動を続けるノズル=ガリュー(会長・長谷川可賀氏)

除塵や水切りなどに使うエアーブローで強い風を送りながら広範囲に噴射できるノズル。ノズルの先端から噴射したエアーの反力を動力源とし、ノズルの先端からエアーを噴射しながら首振り運動を続け広い範囲をエアーブローできる。従来型の幅広いノズルに比べ、エアーの打力が強いまま対象物に噴射できる。

従来の幅広ノズル3個を今回の発明品1個に置き換えると、エアーの消費量は9分の1になり、動力源のコンプレッサーの電気代を大幅に削減できる。

水や切削用クーラント液を噴射するノズルとしても使える。(ガリュー=東京都杉並区)

発明功労賞

フィードロールの無い給紙装置=塚崎昌弘氏

段ボールを組み立てる製函機用に強度やクッション性を保ちながら段ボールシートを供給する装置。高精度の制御が可能なサーボモーターなどを利用し、高度な制御で機内にシートを送り込むシステムを構築。つぶれがない高品質で高精度のシートを生産できる。独立サーボモーターの採用で停止から急加速、急停止などの制御が可能になった。次のシートを確実に遮断し、高速給紙を実現した。

さらに従来機構で使っていた上下するテーブルが不要となり、そこで使われていたベアリングの摩耗や損傷によるシートのズレなどの問題も解消できた。(大阪市西成区)

発明功労賞

高周波加熱装置用の加熱コイル=ティーケーエンジニアリング(高周波事業部高周波開発部副事業部長・阿部一博氏ほか1人)

加工対象物を加熱するための高周波加熱装置に使う加熱コイル。金属3Dプリンターで造形することで継ぎ目のない一体構造となり、繰り返しの加熱による疲労に強い。コイルの寿命は従来のロウ付けコイルの2―5倍。コイルの交換頻度が減り、品質調整時間を削減できる。

内部に水路を設け、焼き付け装置に取り付けるリード部と製品を加熱する加熱部を効率良く冷やし、コイルの温度を従来の3分の1の37度Cに抑えた。さらに部品を機械加工で作る必要がないため、機械加工の難易度によらない自由度が高い設計が可能になった。(ティーケーエンジニアリング=愛知県弥富市)

発明功労賞

防水型で除菌・洗浄を可能にしたインナーブーツ=フッド(代表取締役・山田幸彦氏)

スキーやスノーボードなどのレンタル用品として除菌や洗浄が可能なインナーブーツ。エチレン―酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を使うことで防水性を実現。毎回の使用時に除菌や洗浄ができるため、衛生的で高い安全性を確保できる。従来必要だったブーツの乾燥が不要で、コスト低減につながる。

射出成形でアジア人の足の形に合わせ一体型で作った。EVA素材は塩素を含まず、焼却してもダイオキシンを発生しない。

中国ではウインタースポーツビジネスが拡大傾向にあり、レンタルブーツの需要が伸びると見込む。(フッド=岐阜県郡上市)

発明功労賞

工作機械の管理装置=ユニパルス(技術部部長・技師長・嶋本篤氏ほか4人)

マシニングセンター(MC)の事故防止や性能保全のための二つの検査装置。小型把持力計は筒型容器内に油液を充填しその内圧を測定することで把持力を測定する。測定結果から把持力が低下したツールホルダーを見つけ、精度の低い加工や工具の飛散による重大事故を回避する。

主軸エアブロー検査器ではデジタル処理で圧力エアの流路の詰まりなどを検査できる。センサーにより流路の詰まりを検知し無線で端末に伝える。工作機械のツールマガジンに設置し、工作機械を停止することなく安全で素早い検査が可能になった。(ユニパルス=東京都中央区)

(2023/3/8 05:00)

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