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(2023/3/27 05:00)
言葉を選び褒め育てる
(総合1から続く) 北海道大学大学院農学院環境資源学専攻で、海岸の植物とそこにすむ菌類との共生関係を調べていました。大建工業に2017年に入社し、木質培地を通じ菌類の共生の研究を続けています。研究に関する相談や設備を借りに大学へ出かけることもあります。
企業の研究開発は周りの人たちと合意を得ながら進めることが重要と感じています。常に説明が求められ、「自分は何が分かっていないか」を認識する必要があります。「微生物の研究がやりたい」と入社1年目に言ったのですが、この時が一番大変でした。自分がやりたいことをうまく説明できず、企画に落とし込むのに半年かかりました。ですがこの経験が現在の研究の進め方に生きています。
職場での心がけとして、相手を褒めることが重要です。平安時代の作家である清少納言の日記を読むと、彼女は褒め言葉をうまく使い出世しています。研究開発では途中でうまくいかなくなることがあり、せめて言葉だけでも相手が前向きになるような言葉選びが大切です。例えば後輩の企画書を読んだ時に「雰囲気としては良いと思う」と肯定的な言葉から始め、その後助言します。研究者は気分でパフォーマンスが変わりますよ。
今の生物学の進歩はめざましく、技術の発展を追い理解することで自社の開発に貢献できる手法が見つかるのではと考えています。「好奇心を満たし発見して良かった」ではなく、研究内容を実際に役立てたいです。
高校の部活動で小説を書いていたこともあり、文章の書き方にこだわりがあります。自分の考えを整理する際には、横書きではなく1行25字30行の縦書きにします。上司からは「研究に行き詰まると報告書が縦書きで送られてくる」と苦言を呈されることがあります。(文=大阪・冨井哲雄、写真=田山浩一)
◇大建工業 R&Dセンター加工技術開発室 土づくりマスター(土壌医検定2級) 阿部美聡(あべ・みさと)さん
(2023/3/27 05:00)