(2023/4/5 05:00)
政府は、先端半導体の製造装置23品目を輸出管理の対象に追加する。名指しはしていないものの、安全保障の観点から中国への輸出を厳格化する狙いがある。日系の関連企業10社程度が影響を受けるが、中国の軍事利用を防ぐ上でやむを得ない措置と言える。ただ日本は中国とは安保と経済のバランスを保ち、共存することが求められる。2日の日中外相会談で重要性を確認した意思疎通を継続したい。
外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく経済産業省令を改正し、7月に施行する予定。回路線幅14ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の先端半導体に対応する装置が管理の対象で、輸出は許可制になる。米国や韓国、台湾など42カ国・地域への輸出は手続きを簡素化し、これに含まれない中国などは経産相の個別の許可が必要になる。
「先端」半導体に対象を絞っているため、日系企業への影響は限定的とされる。軍事転用の懸念がない装置や汎用品の対中輸出に影響が及ばないよう、日本政府は日系企業および中国政府との意思疎通を深めたい。
他方、経済産業省は先端半導体の技術開発を加速し、国内関連企業の売上高を2030年に20年比3倍の15兆円とする目標を掲げる。米国が主導する新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」も半導体の供給網強化を目指しており、こうした国内外の戦略で対中輸出の減少を補いたい。
米国は22年10月に対中輸出規制を強化し、先端半導体の製造に必要な装置・技術の輸出を事実上禁止。製造装置で高い技術力を持つ日本とオランダにも同調を促し、オランダは夏前にも輸出規制を発表する。中国は先端半導体が欠かせない人工知能(AI)やスーパーコンピューターを駆使し、軍事技術の高度化を狙っており、安保の観点で日本の今回の判断は適切だ。
中国政府は米国に同調する日本を強く批判し、報復の可能性も示唆する。日本は先進7カ国(G7)議長国として東アジア安保の議論を主導する一方、中国とは安保以外の分野で一段の関係強化の道を模索したい。
(2023/4/5 05:00)
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