(2023/4/6 05:00)
英国の環太平洋連携協定(TPP)加盟が7月に承認される見通しだ。2018年に11カ国で発効して以来、初めて加盟国が増える。これを機に自由貿易圏の拡大を推進したい。他方、東アジアの安全保障が脅かされる中、米国主導の新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の連携強化も併せて進めたい。関税の引き下げ・撤廃による貿易の低コスト化だけでは不十分だ。有事でも供給網が寸断しない体制も確立し持続的な成長を実現したい。
20年に欧州連合(EU)を離脱した英国は、インド太平洋地域を戦略的に重視する「グローバル・ブリテン」を掲げ、翌21年にTPP加盟を申請。英国の加盟により、世界の国内総生産(GDP)に占めるTPPの割合は12%から15%に拡大する。英国は米豪とともにインド太平洋地域での軍事・安全保障枠組み「オーカス」にも参加しており、英国は安全保障の確保と自由貿易推進の両面で同地域での存在感を高めてもらいたい。
米国はトランプ前政権がTPPから離脱し、バイデン政権も雇用を脅かすと加盟には消極的だ。日本政府は引き続き米国にTPP加盟を促すと同時に、対中国を念頭に置いたIPEFも深化させる必要がある。経済安全保障の観点から見ると、貿易の価値観は低コストから安定調達へとすそ野を広げている。自由貿易圏を拡大しつつも、台湾有事や感染症などによる供給網の寸断なども見据え、安定調達できる体制を確立したい。
IPEFには日米韓、豪州、ニュージーランド、インド、フィジー、さらに東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国のうち7カ国の計14カ国が参加する。門戸を世界に開くTPPに対し、IPEFは自由、民主主義、人権などの価値観を共有する国が連携する。関税引き下げなど自由貿易協定を結ばず、半導体やレアアース(希土類)の供給網形成などを目指している。米国での事業拡大を狙うASEANには魅力に乏しいとの指摘もあるが、経済安保の価値観を共有できるよう日米には主導力を発揮してもらいたい。
(2023/4/6 05:00)
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