(2023/4/14 05:00)
欧米でくすぶる金融不安が世界経済の下振れリスクとなっている。国際通貨基金(IMF)も、世界経済が軟着陸する兆しが消えつつあると警鐘を鳴らす。世界経済のリスクがインフレから金融不安にシフトしていることに留意したい。先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は13日(日本時間)、金融システム安定化に向け、結束して適切な行動をとる用意があるとした共同声明を採択した。各国金融当局は連携を強め、不測の事態に備えてもらいたい。
米金融当局が預金流出の恐れがある銀行に対し、預金の全額保護や緊急融資枠を設ける措置を早々に講じたことで、預金流出は一服している。ただ銀行への監視強化に伴う信用収縮(貸し出し抑制)が米国、さらに世界経済を減速させかねない。
バイデン政権は経営破綻した2行を監視できなかった金融規制改革法を強化し、自己資本や流動性の監視対象となる銀行の範囲を資産規模1000億ドル(約13兆円)以上(従来は2500億ドル以上)に拡大するよう金融当局に指示。自己資本比率の向上を目的とした“貸し渋り”が増加しないか懸念される。
米銀2行の経営破綻は、米FRBによるインフレ退治の金融引き締めに起因している。米FRBは金融不安を勘案し、金融引き締めを停止するのか、インフレ抑制の引き締めを続けるのか難しい判断を迫られている。市場では、5月に政策金利を0・25%引き上げるのを最後に、金融引き締めを停止するとの見方が多い。米FRBは信用収縮と景気に目配りしつつ、経済の軟着陸を模索したい。3月の消費者物価指数の伸び率が前年同月比で5%(前月は6%)に鈍化したのは追い風でもある。
IMFは世界経済見通しを下方修正した。2023年の世界の実質成長率は2・8%と、22年の3・4%から鈍化する。先進国に限れば1・3%の低成長を余儀なくされる。金融不安の行方次第では先進国の成長率は1%を下回る見通しである。世界経済は金融不安のリスクを抱えながらの「不安定な回復」を続けると覚悟しておきたい。
(2023/4/14 05:00)