社説/G7環境相会合 日本、出遅れを巻き返す契機に

(2023/4/18 05:00)

札幌市で開かれていた先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合が16日に閉幕した。焦点だった石炭火力発電所の廃止時期は共同声明に明示されず、電気自動車(EV)に関する共通の数値目標の設定も見送られた。これらの対策は日本が欧米より遅れている分野で、議長国といえども踏み込めなかった。日本が環境問題で抱える課題をあらためて浮き彫りにしたと言え、今回の会合を出遅れを挽回する契機としたい。

共同声明では、パリ協定(産業革命前と比べ地球の気温上昇を1・5度C以内に抑える)実現に向け、2035年までに温室効果ガスを19年比60%削減する目標が盛り込まれた。これまでの石炭火力に加え、天然ガスの使用も「段階的に廃止」するとし、廃止の対象を拡大した点は評価できる。ただ欧州各国が求めた廃止時期の明示には議長国・日本が慎重姿勢を崩さず、妥協案となった感は否めない。

日本は11年の東京電力福島第一原発事故後、原子力発電所の再稼働が進まず、再生可能エネルギー対策も欧州より遅れている。発電の3分の2を化石燃料に依存しており、具体的な廃止時期を示せない事情がある。日本は再生可能エネの主力電源化を目指しつつ、安全を確認できた原発の再稼働や新増設などにより、化石燃料への依存を弱めていくことが求められる。またG7が30年までに洋上風力発電を21年比で約7倍、太陽光発電を約3倍に拡大することでも合意しており、日本も計画達成への貢献が期待される。

自動車から出る二酸化炭素を(CO2)35年までに00年比で半減させる「可能性に留意する」ことでも合意した。表現が弱い上、EV販売の共通目標の設定も見送られた。ハイブリッド車(HV)に強みを持つ日本は、欧州より遅れたEVに特化した数値目標は掲げにくい。ただ米国は32年の新車販売の最大7割をEVで占め、欧州連合(EU)も35年にゼロエミッション(ZEV)車以外の販売を原則禁止し、EV化を推進する。日本は対応を急ぎ、環境分野での国際競争力を引き上げたい。

(2023/4/18 05:00)

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