社説/女性役員比率30%へ 多様性でイノベーション促進を

(2023/5/4 05:00)

岸田文雄首相は、企業の女性役員比率について新たな目標を示した。東証プライム上場企業を対象に、2030年までに30%以上を目指すという内容だ。欧米と比べて遅れている多様性を促すことで、男女の所得格差是正や労働力不足の緩和、イノベーション創出につなげる狙いを込める。19日に開幕する主要7カ国(G7)広島サミットにはジェンダーの視点が反映される。日本も女性が企業や社会で担うべき役割を見つめ直し、G7の足並みを揃えたい。

女性役員比率の新たな目標は6月に策定する「女性版骨太の方針2023」に盛り込む。目標達成に向け、企業には短期的な数値目標や行動計画の策定を求めるなど、従来より踏み込んだ具体策を講じる。企業の意欲的な取り組みに期待したい。

内閣府資料によると、日本の女性役員比率は22年で9・1%(22年7月末)にとどまり、フランスの45・2%、英国の37・2%、米国の31・3%などに比べて見劣りする。欧州連合(EU)は26年末までに、域内の上場企業を対象に全役員の33%以上か、社外取締役の4割以上を女性にすることを求めている。日本もEUや米国との格差を縮め、多様な社会を実現したい。

日本の男女格差は役員比率にとどまらない。女性管理職比率は1ケタ台にとどまり、女性の非正規率は男性より高い。男女の賃金格差は欧米の10%台に対し日本は20%台に達するという調査もある。このため岸田首相は女性役員比率の向上に加え、女性の所得向上に向けて非正規雇用の正規化や、女性のデジタル人材育成を推進することも女性版骨太の方針に盛り込む。

すでに22年7月に男女間の所得格差の開示が企業(従業員301人以上)に義務化されており、企業には格差是正による所得の底上げが求められる。

企業は短時間正社員制度や勤務地限定正社員制度、職種・職務限定正社員制度などの多様な選択肢を女性に用意し、育児を側面支援すれば少子化是正にも寄与する。女性活躍を促す多様な働き方を模索し、労働市場で選ばれる企業を目指したい。

(2023/5/4 05:00)

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