社説/米EV減税 米車のみ対象、制度の見直しを

(2023/5/8 05:00)

バイデン米政権は、電気自動車(EV)などエコカーに対する減税措置について、対象を米国メーカー3社の11車種に限定し、日韓欧のメーカーを対象外としている。日韓および北大西洋条約機構(NATO)加盟国の欧州は米国の同盟国である。米国が自国メーカーを過度に優先する政策は、同志国のサプライチェーン(供給網)を強靱(きょうじん)化する戦略と矛盾するのではないか。日本はEV化への対応を急ぎつつ、米政府には引き続き制度の見直しを強く求めたい。

米政府は2022年8月に成立した歳出・歳入法(インフレ抑制法)にEV購入奨励条項を盛り込んでいる。EVなどのエコカーを購入すれば、最大で7500ドル(約103万円)の税額控除を受けられる内容だ。ただ減税の恩恵が米国メーカーに有利に及ぶ条件に問題がある。

北米で組み立てた車に限定し、車載電池も50%を北米で製造・組み立てる必要がある。電池に使うリチウムなどの重要鉱物も40%を米国あるいは米国の自由貿易協定(FTA)締結国などから調達する条件も付されている。当初、日本で採取・加工された重要鉱物を使った場合でも、北米で車を組み立てれば減税対象となっていた。米政府が減税措置を厳格化し、自国優先政策に傾いた感は否めない。

西村康稔経産相は「あらゆる機会をとらえ、米側に働きかけたい」と指摘しており、米政府には制度の見直しを粘り強く訴えることが求められる。

他方、バイデン政権は車に新しい環境規制を導入し、二酸化炭素(CO2)排出量を27年から段階的に50%程度削減するよう車メーカーに求める。32年には新車販売の最大70%をEVが占めると見通す。日系メーカーもEV化の加速が求められる。

日本のEVは中国や欧米に大きく後れをとる。21年のメーカー別EV販売台数(上位20社)のシェアで中国が46%、米国が26%、ドイツが25%だったのに対し、日本はわずか2・9%。またEVにはガソリン車の2倍以上の半導体が使われている。同志国は、半導体の強固な供給網の構築も急ぐ必要がある。

(2023/5/8 05:00)

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