社説/G7広島サミット(2)対中関係「対立と協力」の均衡を

(2023/5/17 05:00)

先進7カ国(G7)は広島サミットで、ウクライナ情勢に加えて東アジアの安全保障問題も共有する。G7は中国の覇権主義的な海洋進出に強く反対し、深刻な懸念を表明する見通しだ。G7が安保の枠組みを欧州から東アジアに拡大させるものと評価したい。他方、中国は世界経済に深く関与し、中国抜きの経済活動は想定できない。G7は中国との意思疎通を継続し「対立と協力」の関係を維持するバランスも求められる。

岸田文雄首相は広島サミットに先立つ1月の英仏伊との各首脳会談で、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、台湾有事も念頭に「力による一方的な現状変更は認められない」との認識を共有した。南太平洋にはフランス領があり、英国は環太平洋連携協定(TPP)加盟が決まった。欧州も安保上の脅威が欧州からインド太平洋に拡大していることを共有しており、G7は結束を強化して中国への抑止力を高めていきたい。

広島サミットでは経済安全保障の確保に向けた脱中国も確認する見通しだ。電気自動車(EV)の電池などに使うリチウムなどの重要鉱物は中国に依存しており、グローバルサウスを交えて持続可能で強靱(きょうじん)な供給網を再構築する。米国主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を軸に、新たな体制の整備を急ぎたい。

中国が輸出相手国に輸出制限などの圧力をかける「経済的威圧」への対抗措置も議論する見通しだ。G7は中国に責任ある行動を強く求めてもらいたい。

広島サミットでは中国を念頭に置いた安全保障と経済安保の両面で、これまで以上に踏み込んだ声明を発表する見通しで、中国の反発は必至だろう。中国は世界経済に不可欠な存在であり、G7は安保を除く経済分野では中国との関係を継続する必要がある。中国は最大の温室効果ガス排出国であり、同国の協力なしに気候変動問題も前進しない。途上国の債務問題も、最大の債権国である中国による債務再編などの支援が欠かせない。G7には対立一辺倒でない対中関係の構築が求められる。

(2023/5/17 05:00)

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