社説/G7広島サミット(4)金融・経済安定の起点としたい

(2023/5/19 05:00)

先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)では世界経済も主要テーマになる。世界的なインフレ圧力に加え、米欧では金融不安がくすぶり、世界経済は先行き不透明な「不安定な回復」(国際通貨基金=IMF)を余儀なくされている。金融システムの安定化、インフレの抑制、景気の下支えをいかに実現するのか、広島サミットが軟着陸への起点となるか注視したい。

広島サミットではG7が結束し、金融安定化に向けて適切に行動する用意があると表明する見通しだ。G7の監督・規制当局が密接に連携し、市場動向を監視。交流サイト(SNS)を通じた預金の大量流出といったデジタル時代の新たなリスクも、従来の監督・規制に“隙間”があったとし対処する方針を確認する。米欧の金融不安を拭い、インフレと景気への対応に集中できる環境を整えたい。

ただ銀行への規制を強化し過ぎると融資の厳格化(貸し渋り)を招き、経済を減速させかねないことには留意が必要だ。

世界的なインフレ圧力はウクライナ情勢に起因している。エネルギーや食料をはじめ、供給網の過度な集中は経済安全保障の観点から緩和が必要だ。広島サミットではグローバルサウスを交えた供給網多様化の重要性を表明する見通しで、各国の自由貿易を尊重しつつ安定調達体制を築き、インフレのリスクを最小限にとどめていきたい。

高止まりしている足元のインフレ抑制に向け、米欧金融当局には慎重な対応を求めたい。米欧の金融引き締めは長期化し、米国も年内に景気後退に陥るとの観測もある。米国の債務上限問題の解消はもとより、米欧には景気への目配りも求めたい。

G7は米欧の利上げで負担が増す途上国の債務問題も緊急課題と位置付ける。影響は低所得国から中所得国へと拡大しつつあり、中所得国スリランカの債務削減に向けた債権国会議が始まっている。だが最大の債権国・中国はオブザーバー参加にとどまる。中国を取り込み、債務問題の成功事例を早期に作りたい。中国とは安全保障以外では協力関係を強める必要がある。

(2023/5/19 05:00)

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